11 / 106
第11話
「で、でも薬はちゃんと飲んで、」
「うん、殆どしないんだけどさぁ」
スっと近づかれ思わず項を守ろうと手が動いたが、ロイさんに掴まれてそれも出来なかった。
そのままスン、と耳元付近の匂いを嗅がれる。
まるで昨日のようだ。
「……やっぱり匂いするよ。すっごく少ないけど。これのせいじゃないの?」
そう言われても自分では分からない。
発情自体も薬で抑えられているので身体が疼くわけでもない。なので勝手にヒートは終わったような気になっていた。
きちんとヒートの申請を出して休んだ方が良いのだろうか。
アツシがそう悩んでいるとロイさんが意識を戻させるように腕を軽く引っ張った。
「それより、さっきの話考えてくれた?」
「…あ、」
首輪の件だ。
仕事が忙しくてついうっかり忘れていた。
首輪は必要だが、もう今日は帰るだけだし明日からきちんと付ければ何も問題ないはずだ。
そう言って断ろうととするとグン、と圧が掛かった。今までで1番強い。
「……っ、ぁ」
カァッと項が熱くなる。それと同時に、人には言い難い場所が疼いた。
「え、なに……っ」
――熱い。
ドクドクと心臓の音が耳のすぐ後ろで聞こえる。
「……ぁ、」
ガクガクと膝が震えて立っていられない。
思わず膝の力が抜けるとロイさんに腰を抱きすくめられた。
「やだ、ロイさ……それやめ、て」
これは確実にロイさんの、アルファの圧だ。それも強制的に発情を促す程のもの。
身体が熱い。
ロイさんに触れられているところ全体がビリビリする。
「はな……っはなして……」
「だって立ってられないじゃない」
「ひ、ぁ……」
誰のせいだと思ってるんだと悪態をつきたかったが、抱え直された刺激で声が漏れて結局言えなかった。
ともだちにシェアしよう!