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第14話

「つっ、かれた……」 アパートへと逃げ帰ったアツシは食事もそこそこにベッドへとダイブした。 ポケットからケータイを取り出し時計を見れば3時近い。いつもより大幅に遅れての帰宅だった。 何だか色々起きすぎて頭が回らない。 そっと首に触れると首輪がカシャリと音を立てた。 触れたせいか首筋が圧迫され、吸いつかれた首がジンと痛んだ。 ……もう、無理。ご飯たべれる気がしない。 どうせ明日になればタイガとユキオが来て嫌でも食べさせられるのだから良いか。 面倒になったアツシはそのまま毛布の中に転がり込んだ。 ――カタン 何やら物音がする。何だろうかと脳内で思うものの、身体がうまく動かない。 多分まだ身体が覚醒出来てないからだろう。所謂金縛りのようなものだ。 今度は近くで衣擦れの音がする……と思ったら前髪を触られた。 一人暮らしの家で寝てる間に髪を触られるなんて普通なら飛び上がって怖がるところだが、大体の目星は付いていた。 ユキオかタイガが起こしに来たのだろう。アツシが休みの日は大抵一緒に食事をする為2人がこの家を訪れることになっている。いない時にも上がれるよう合鍵も渡してあるのでこう言ったことはしょっちゅうだった。 とはいえ、いつもなら早めに起きて食事の準備やら洗濯やらと済ませて待っているのが常だ。 しかし一昨日からの一件で思ったより疲れていたらしい。 どうしても起きれなくてアツシは眉間にシワを寄せた。 すると前髪に触れていた手がゆっくりと下へ降りていき――首元の所でピタリと止まった。 その気配でアツシはなんとか目を覚ました。 「あ、起きた」 ベッドの縁に腰かけたユキオがアツシを覗き込んでいる。 「おはよ……いま、なんじ」 アツシがかすれた声で問いかけるとユキオはベッドサイドに置かれた小さな時計を見やった。 「はよ。今12時45分」 いつもなら10時には起きている。完全に寝坊した。 「ごめん」 「別にいい。ただ起きてないから珍しいと思って」 目線だけで何かあった?と聞いてくる。 流石に夜のことを話すのはと思ったので視線を逸らした。 「ちょっと疲れちゃって」 「……これは、どうしたの?」 これ、と言いながらユキオは首輪に触れる。 「……なんか貰ったやつ付けてみたんだけど痛くって、昨日買ってきた」 無残な痕が見えないのが不幸中の幸いだった。あれが見えていたら何も言い訳出来ない。 「……ふーん」 ユキオの視線が痛い。 これは絶対納得していない時の反応だ。 一体どれに対してだろうかと視線を探るがいまいち判断つかなかった。 「……そ、そういえばタイガは?」 話をそらそうというわけではないが、一緒に来ているはずの姿が見えなくてアツシはユキオを声をかけた。 「……ご飯作ってる」 怒られるかと思ったがそんなことはなく、ユキオはそっぽを向きながらも答えてくれた。 確かに嗅いでみれば辺りには味噌汁の香りが漂っていた。匂いとは不思議なもので、こんなことがあった後だというのにも関わらず腹が空く。 「ありがと」 「本人に言えば」 「ユキオも来てくれてありがとう」 無表情で明後日の方向を向いているユキオの頭を撫でる。ふん、と鼻で笑いながらも大人しく撫でられている。 納得したわけではないだろうがとりあえずこの話はおしまいしてくれるらしい。 アツシはとりあえずキッチンの方へ移動する事にした。 キッチンに入るとすぐにガスコンロの所に立つ赤髪が見えた。後ろから見ると癖っ毛なのがよく分かる。 こちらに気づいたらしいタイガはお玉を持ったまま振り返る。 「おー!おそようさん!」 「おはよ……あれ?」 近くに来たアツシははたと立ち止まって首を傾げた。 「タイガなんかまた背、伸びた?」 昨日はそれどころしゃなかったので気づかなかったが、前来た時より目線が遠くなっている。 アツシも平均より高い筈なのだが、タイガはさらにその上をいっているようだ。 アツシの身長が最後に測った時は……確か178cmだっただろうか。 「そーなんだよ。今186!成長痛もないから流石にもう伸びねーだろうけど」 まさかそんなに伸びていたとは思わなかった。自慢げに笑うタイガにユキオが後ろから悪態を吐いた。 「図体ばっかデカくて邪魔」 「へっへーん!ユキオくんはちっさいからいーですなー」 「うざ」 挑発されたユキオはタイガの脇腹を問答無用でぶっ刺した。ユキオだって決して低くはない。ただ、アツシは兎も角筋肉質で高身長なタイガと並ぶとどうしても低く見えてしまう。 そのせいで時折ユキオはオメガと間違われることがある。 アルファとして不出来なわけでは決してない。何でも卒なくこなす彼はむしろ優秀な部類だ。 だが、ユキオの美しい容姿が現実とは異なる幻想を見出させるらしい。 ユキオは身長こそ普通だが、肌はきめ細やかな陶磁器色で深い海の色を閉じ込めたサファイアブルーの瞳を持っている。それを縁取るまつげも髪も青みがかった白だ。 ロイさんとはまた違った青少年特有の儚い美しさがある。 オメガは背が低く、とても美しい容姿をしていることが多いというが、この容姿ではついオメガなのではとアルファ達がこぞって期待してしまうのも頷ける。

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