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第34話※

「んぁ……っ!!」 「声我慢しなくていいの?それともみんなに聞いてもらう?」 「や、だ……ぁ、」 慌てて口を閉じるがそれを邪魔するかのように扱かれる。 ダメだもう保たない。 イきたくてふるふると震え出すとロイさんはアツシのポケットを漁り出した。 取り出したのはさっきキイトから借りたハンカチだ。 「ろいさん、何す……」 「せっかく借りたんだから使わないとね」 何をするのかと思えば、あろうことかロイさんはそのハンカチでアツシのペニスを扱き出した。 カウパーが滲んでいるせいで痛くはない。 痛くはないが借りたものでこんなことするとは思わず背徳感で身体が震える。 「ちょっと……!ロイさん……っ!」 「大きい声出すと聞こえるよ。あぁ、でも聞いてほしいのかな?キイトくん呼んでこようか?」 「嫌だ……っ、やめて……」 こんなところ見られたらもう仕事が出来ない。 思わず声が小さくなるとその間にもロイさんはハンカチを上下させる。 直接触れるのとは違ってぬるぬると滑るそれは気持ちいい。 「ハンカチ止めて……それ取って……っ!」 「やぁだ。ほら、イきたいんでしょ?イけば?」 そう言うとロイさんは手のスピードを速めた。 我慢したいけどもう無理だ。 太ももの内側がビクビクと痙攣する。 「ァ……っあぁ!!」 ただでさえ限界だったのだ。 ろくに我慢することも出来ずアツシはガクガクと震えたまま吐精した。 「ぁ……っ、ぁ……」 「あーぁ、イっちゃったね。後輩がせっかく貸してくれたのに」 ぶるりと震えて出し切るとロイさんはハンカチでそれを拭う。 信じられない。 ヘタリ込むアツシにロイさんはにこやかな顔でハンカチを渡した。 「はい、返すね」 「――っ!!」 恥ずかしさで声も出ない。 突拍子もないことをする人だとは思っていたがまさかこんなことをするとは思わなかった。 こんなことに使って返せるわけがない。 引っ手繰るようにして受け取りながらアツシは羞恥心と罪悪感で震えた。 そんなアツシにロイさんは後ろから耳打ちする。 「明日昼過ぎ頃きてくれる?」 それだけ言い残すと返事も聞かずにロイさんは倉庫をあとにした。 残されたアツシは借りたハンカチを握りしめたまま、ぽたぽたと流れてくる涙を手で拭う。 キイトへの罪悪感でどうにかなりそうだった。 それでも何とか衣服を整えるとアツシも倉庫を後にしてフロアへと戻っていった。 昼過ぎ、アツシは指定された通りロイさん宅へと向かっていた。 あんな事があった後だ。 正直行きたくない。 それに新しいハンカチを探さないといけないし。 さすがに洗ったところであんな事に使ったハンカチを返せるわけがない。 アツシは全く同じハンカチを買って誤魔化そうとしていた。 どこで探そうかな。 そもそもなんでこんな事になってしまったのか。 どう考えてもロイさんが悪い。 普通人から借りたハンカチと分かっててあんな事に使うか?それともわざとなのか? いつもえっちなことをしてくるが昨日は何だか雰囲気が違った。 何といえばいいか分からないがイライラしているというか何というか。 ――ちょっと、怖かったな。 アツシは基本人の気持ちに鈍い方だが、負の感情の変化だけはなんとなく分かる。 ただしその理由がいつもよく分からないのが難点だったが。 今回もなんでロイさんがあんな雰囲気だったのかいまいち思いつかない。 まさかハンカチを借りたから、なんてことはないだろう。 だってそれじゃあ嫉妬でもしてるみたいだ。 そんなはずない、とアツシは無意識に首を横に振った。というかそもそもキイトに嫉妬する意味も分からないし。 そんなわけで早々にその理由を却下したアツシは歩きながらも再び考える。 けれど結局答えは出ず仕舞いだった。 考えることがなくなると途端に暇になる。暇になると憂鬱な気分が戻ってきてしまう。 それでも言われた通りロイさんのところへ向かうのは行かなかったら後が怖いというのもあるけれど、結局のところ理由が知りたいからかもしれない。 本人がちゃんと答えるか分からないが聞いてみようか。 もやもやとしたものを抱えたままなのは気になって仕方ない。そもそも俺はなんでこんなにあの人のことを気にしてるんだ。 酷い上司だ、で切り捨てられない自分が憎い。 『明日昼過ぎに来て』 休みの日だろうとロイさんの呼び出しはよくあることだ。 その時点でおかしいのだが、いつものこと故アツシはおかしいという事実に気づいていなかった。 さて、店の方は休みなので多分家に来いということで合っていると思うのだが……少し不安だ。 ロイさんのマンションにはついこの前行ったばかりなので迷いもせず進んでいく。 あっという間についてしまったアツシはマンションの前で足を止めた。 昨日のことを考えてしまうと何となく躊躇してしまう。 いやでも、嫌だったら帰れば良いんだし。 そう自分に言い聞かせると意を決してマンションへと入っていくことにした。

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