69 / 106

第69話

「……アイツどうかしたんすか」 コテツさんの声に思わず肩が震えそうになってぐっ、とお腹に力を込めて我慢した。 「ちょっと調子悪いみたい。……それより、どうかしたの?」 「……来月のシフトを、ちょっと調整して欲しくて」 ボソボソと話す2人の会話を聞いているがあまり耳に入ってこない。 兎に角見えないように大人しくしているので精一杯だった。アツシが必死になって縮こまっているうちに、そのまま幾つか言葉を交わすとコテツさんはあっさりと帰っていく。 迷いなく遠ざかっていく足音に心の底からホッとした。 悪びれもなくひょいと顔を覗き込まれたアツシは真っ赤になってロイさんを睨む。 「帰ったよ」 「な、何考えてるんですか……っ、信じられない」 「そもそも君が言ったことでしょ」 それはそうだけど、と思いつつもやはり腑に落ちない。 バレなかったからいいものの、バレていたらそれこそどうする気だったんだ。 いや、この人の事だからどうもしないのかもしれないが、少なくともアツシは違う。 こんな姿を見られて平気なわけじゃない。 「……まぁ本題はこっちだけど」 そう言ってポケットから何か白いものを取り出す。 何を取りだしたのかよく分からない。 「な、んですかそれ」 「んー?君用に作ってもらったんだ」 今度は何をする気かと警戒していると唐突に耳を触られた。 思わず身を竦めると宥める様に耳を親指で撫でられる。 「ピアス。開けるから」 「なんで……い、いりません」 突然のことで意味が分からない。 機嫌の良さそうな視線に動揺する気持ちと期待する気持ちが綯い交ぜになる。 「君には聞いてないよ」 グッとロイさんのフェロモンが香った。 ようやっと息が整ってきたところだったのに、クラクラするほどの香りに当てられてうまく身体が動かせなくなる。 これは、拘束のつもりだ。 「ちょっと大人しくしてて」 「ず、るい……っひ……、」 取り出したのはピアッサーだったらしい。 鋭利な針先を見てしまい、急に不安感が襲ってきた。 なんでいきなりピアスなんか開けようとするんだろうか。 ぴとりと右耳にあてがわれて思わず固く目を閉じた。 「こわい?」 「……こ、わいです」 素直に吐露するとクスクスと笑われるが笑い事では無い。 痛いのは嫌だ。 「い、痛いのは嫌です……」 ――怖い。 ただでさえも痛がりなのだ。だというのに前触れもなくいきなりピアスを開けるなんて言われて怖気付いた。 逃げたくても身体に上手く力が入らない。それでいてヒートしきらない絶妙な加減で拘束してくるところがずるい。 「なら少しリラックスしようか」 「ン……っ、」 そう言ってロイさんはアツシの首筋に唇を寄せる。 食みながらピアッサーを持っている方とは逆の手で胸を摘む様に弄った。 「ぁ、や……っ、」 ゾクゾクとした快感が身体を駆け抜けて思わず腰をくねらせる。 最近本当に胸が性感帯になってしまった。 最初の頃はくすぐったいだけだったのに今は少し触られただけで吐き出す息が熱い。 まだヒート紛いの熱も抜けきっていないのにこれはまずい。 今度は突起に唇を寄せる。 唇で挟むように弄られるとどうしようもなく息が乱れた。 暫く反対の胸の上で遊んでいた手はそのうち脇腹の方へと降りていく。 「ンん……っァ、」 撫でる様にやわやわと下をまさぐられて声が漏れた。 そのうちゆっくりと竿部分を扱きながら胸元を甘噛みされる。 ――熱い。 じわじわと高められて辛い。 手の甲で唇を押さえるがあまり意味をなさなかった。 そのうち濡れた音が響き始めると直接握られる。 「あァ……っ、」 先端を抉るように人差し指でグリグリと弄りながら親指の腹でくびれを擦る。 それがどうしようもなく気持ち良くて思わず手にしがみつくと今度はくびれだけを握り込むようにして擦られた。 「や、ァ……っ、やだ……も、やめ……っ」 舌でグリグリと突起をなぶられる。 ――イきそ……っ、 息を詰めていると耳元にピアッサーが宛てがわれた。 それに気を取られた瞬間、鈴口を舌で思い切り抉られる。 それと同時にガチャン、と音を立てて耳に鋭い痛みが走った。 「ひっァぁ゛……っ!!!」 痛いはずなのに快感の方が勝ってその衝撃でアツシは勢いよく吐精する。 搾り取る様に扱かれるとビクビクと腰が跳ねる。 「ぁ゛……っ、ぁ……、」 耳がじわじわと熱い。なのに身体は余韻でガクガクと震える。痛いのか気持ちいいのか分からなくて混乱するアツシをよそに、ロイさんは満足そうにアツシを――いや、アツシの耳元を見つめた。 「うん、やっぱり似合ってる。それ、付けててね」 「ぅ……、?」 どういうことかよく分からない。 ただロイさんが嬉しそうに目を細める姿につい見とれてしまう。 そっと触れると耳からはジンとした痛みと共に冷たい無機質な感触が伝わってきた。ホントに開いてるらしい。

ともだちにシェアしよう!