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第80話

そこでふと、この前シキさんに押し付けられたバイブの存在を思い出した。 あの時は恥ずかしいやら情けないやら色々な感情が湧き出てきたものだが、今はそんなもの抜きにして素直に同意出来る。   シキさんの言う通りだ。 自分じゃどうしようもなくなる。 したくないとか恥ずかしいとかもうそういう次元じゃない。今だって、この苦しさから逃れることしか考えられない。 アツシは頭の片隅で貰った袋を放り込んだ場所を思い出す。確かクローゼットの奥のタンスに放り込んだ筈だ。 足が震えて上手く歩くことが出来ないのでタンスまで何とか四つん這いで這って行き、目当てのものを探す。 すぐにあのピンクが見え隠れする袋を見つけ出したが、手が震えて箱を開けるのがもどかしい。 何とかバイブを取り出すとベッドに戻る余裕もなくその場で入口ヘと宛がった。 ピンク色の男性を模したそれはつるりとしている。 先端部分を反対の手で支えながら指で場所を探りながら宛てがう。 触れたそこはローションが必要ないくらいに濡れていた。 ぴとりと触れる感覚でその先を想像してしまい身体が勝手に期待して震える。 浅ましい身体になってしまったと思いながらももう手は止められなかった。 「んン、ァ゛……ッ、」 押し込むとくぷくぷと音を立てて先端を飲み込んでいく。 ロイさんのより少し小さいくらいの大きさだろうか。スムーズなようでいて入口が固いのでそれなりの抵抗を感じる。 「……っく、ぁ……ぅ、」 ゆっくりとバイブが中に入っていくのが感覚で伝わってきた。無理に押し広げられて苦しい筈なのに今は堪らなく気持ちが良い。 宛がった時は冷たく感じたのに、もう先端は馴染んだらしい。特に冷感は感じず、かといって人肌は感じられない。その事に少しばかり寂しさと物足りなさを感じる。 それでもようやく埋められた質感に安堵してアツシは熱い息を吐き出した。 「はぁ……ンっ、ァあ……っ!!」 奥まで入り切ると、先端が降りてきた子宮に当たった。 ズンと重たい刺激を感じてしまい中が締まるとバイブがイイ所に当たる。締め付けた快感でそのまますぐにイってしまった。 「ぁ゛……ァあ、」 ただ射精する時とは違って登り詰めたまま降りられない快感の波が気持ちいい。 暫くはそのままふわふわとした刺激を味わっていたがそれだけじゃ満足出来ない。 四つん這いのまま後ろに手をやり、何度も自分で出し入れして奥を突く。 『ここ、当たってるの分かる……っ?』 「ぃ……ぁっ……、ぅンんっ!!」 ――ロイさん……っ、 馬鹿みたいに触られた時のことを思い出す。 声が聞きたい。 触って欲しい。 あの声が、手が、熱が……たまらなく恋しい。 「あ……っ、ろいさ……っンん、」 そのうち出し入れする暇も惜しくなり座り込むような体勢へと変えた。膝を抱えて手で押し込む様にすると奥が押されて気持ちいい。 「い……っン!!」 何度目か分からない絶頂を迎える。 「ろいさ……ろいさぁ……ん……っふ、」 ボロボロと涙が溢れてくる。 会いたい。会ってキスがしたいし抱きしめて欲しい。 こんな無機質な物じゃなくてロイさんが欲しい。 「ふ……ぅ、あ……っ、」 思えば思う程身体は高揚していくのに息が出来ない程胸が苦しい。 それでも手が止められない。 グチュグチュと卑猥な音が耳に残る。 気持ちいいのに――苦しくて辛い。 区切りをつけなきゃなんて言っておいて全然気持ちに区切りがついていない。 今だって堪らなくロイさんが恋しい。 「ろいさん……っすき……」 言葉に出せば出すほど気持ちが溢れて止められない。 傍にいたい。 「すきぃ……ろいさ……っごめ……なさ、」 辛い。 好きにならなきゃ良かったと思うのにどうしようもなく惹かれてしまう。 アルファだからじゃない。 ロイさんがいい。 「ぁ……っ、ろいさん……!!」 ――諦められない。 「ぁ、あ゛ァ……っ!!」 ビクビクと身体が痙攣する。 イった余韻に浸かりながら、何の涙か分からない涙がボロリと溢れた。

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