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2 和輝、目撃する

何故、亮介にちょっかいを出すのかと問われたら和輝は「なかなか堕とせないから」と答えるだろう。 昔からモテていた和輝は、少し仲良くしたり気のある素振りを見せれば、面白いほどすぐ相手が堕ちていた。だけど亮介はどんなにやっても靡かない。好き好きオーラを出し始めて1年以上経つ。それでも慎吾ばかり追いかける亮介をどうにか堕としてやろうと半分、意地になっている。 そんなある日、和輝は偶然見かけてしまった。 夕方の体育館の裏で。 忘れ物を取りに行った帰り道、たまたま通りかかったその先に二つの影が伸びていた。 こんな人気のないとこにいるなんて、キスでもしてんだろと軽い気持ちで覗いた。 男同士のカップルが多いここでは、たまにキスをしてるラブラブな二人を見かけることがある。 背の低いクルクルした髪の子と、短髪の子がキスをしていた。 (…慎吾?) 片方の子は紛れもなく慎吾だ。そして二人はキスを終えて見つめ合っている。どう考えても二人は恋人同士。相手の短髪の子は片山という体育科の同級生だ。 二人が移動し始めたので、和輝は慌ててその場を離れる。 (…さて、どうするかな) 頭をかきながら和輝は亮介のことを考えていた。 その後も亮介は相変わらず慎吾を目で追っている。そんなに見てると穴が開くんじゃないかと思うほど。 そう思いながらも自分もまた亮介を追ってしまっている。明らかに慎吾と片山のキスシーンを目撃してから増えていた。 まさにチャンス到来、慎吾に「彼」がいることを教えてやれば亮介を堕とすのは容易いはず。 なのに何故、二の足を踏んでいるのかと和輝は溜息をつく。 まさか「彼」がいるなんて思っていない亮介に打ち明けたらどんな顔をするだろうか…、きっと悲しそうな顔をするのかなと思うと和輝は何だか胸が痛んだ。 (…違う、俺は単に亮介を堕としたいだけだ!こんな天使キャラじゃないし!) 胸の痛みは気のせいとしておく、と自分に言い聞かせ今日も亮介にちょっかいを出す。 「亮介ー、今日もいいお尻してんねーー」 「お前、また触ったなー!!」

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