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「いま、なにか…」
「……ああ。常盤、この辺りの空き教室か、もしくは普段使われていない部屋はどこがあった?」
今はもう声は聞こえない。静まり返った廊下で声を潜めながらも耳を澄ます。
何か、物音でも聞こえてくればわかりやすくていいが。
しかしそれは結局ただの俺の希望的観測にすぎなくて、それ以降物音や声が聞こえることは一切無かった。
隣で常盤はポケットから携帯を取り出すと学園内マップを広げ操作していく。
これはうちの学校の専用アプリだ。マップ確認だけなら全校生徒誰でも見ることができるが生徒会役員となるとそこで詳しい情報も見れたりする、という優れものである。
「この階、付近に空き教室はありません。
第二数学準備室と体育準備室がありますけど…そうですね、第二数学準備室は暴力、強姦事件などの被害が頻繁に起こってます。
なので鍵を変える、施錠を忘れないなどの対策を取るよう去年の年度末の会議で決定されてますけども……」
「…そうか。常盤、お前は風紀の連中に連絡してから念のため体育準備室の確認をしろ。俺は数学準備室へ向かう」
「はい、あっ会長!これ持って行ってください!」
慌ててポケットから何かを取り出して差し出す常盤、それを受け取って確認する。
マスターキーだ。
常盤と顔を見合わせて互いに頷く。
もし俺の方が間違いだとしたら急いで常盤に鍵を渡しに行かなければならない。
体育準備室と数学準備室は逆方向だし、どっちにしろあの声の感じだとちんたらしている余裕はなさそうだ、急ごう。
マスターキーを握り、踵を返して早足で歩き出す。
常盤も逆方向へと歩き始め、それと同時進行でどこかへ電話を掛ける声を聞きながら、俺も第2数学準備室へと向かって駆け出した。
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