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 一年生メンバーの任命式も無事に終わってホッとする。去年の任命式を思い出すと自嘲してしまうが、今年は二人の名前を読み上げると黄色い歓声が沸き起こる華々しいものになった。  会長補佐の葵君は兄の鷹司と比べれば性格は控えめではあるが、鷹司家のネームバリュー以外にも鷹司とはまた違ったカリスマ性がある。副会長補佐の隼人君に至っては、英国のロイヤルファミリーの王子のようなたたずまいだ。 「二人はもちろんだけど、今日は羽柴っちへの歓声もすごかったねえ」 「は? 何が?」 「そうそう。きゃー、羽柴様ぁーってな。なんか復帰してから毎回増えて行ってないか?」  槙村のその一言に、御子柴が大きく頷いた。  確かに最近、俺に対する注目度は高くなったような気もする。日向や他のメンバーがいない時でも、俺が廊下を歩いていると黄色い歓声が上がるようになった。  ほんの数週間前は見向きもされなかったことを思えば、複雑な気分だが。まあ、目の下に真っ黒なクマを飼って寝癖ばりばりの伸び放題の髪型をしていたことを思えば、当然のことだとは思うけども。 「そんで、今日の放課後は羽柴親衛隊初のミーティングだよね」  よかったねと笑う日向には悪いが、やはり複雑な思いは拭えなかった。 「そんじゃ、また明日ねー」  今日は久しぶりの生徒会活動が休みの日で、他のメンバーは早々に帰って行った。新歓も終わり、進級後初の実力テストを間近に控えた今、生徒会の仕事はいくつかの書類のみの状態だ。  今回のテストは前年度に習ったこと全てがテスト範囲で、文字通り自分の学力の実力を試すことになっている。それだけに各種部活や委員会の殆どの活動が、テスト休みとなっていた。  実力テストが終わると、今度は校内球技大会が待っている。このイベントの主催者は体育委員会で、生徒会は体育委員会のサポート役だ。  とは言え新歓のような仕事量もないし、しばらくは穏やかな日々が送れそうだ。一人で仕事を熟していた時のことを思えば夢のようで、自然と穏やかな気持ちになって来る。  岡崎君の手紙には、申し訳ないが当たり障りのない返事を書いた。好きだと遠回しに告白されるもお付き合いを求められたわけでもなく、いつもと変わらない日々を送っている。 「……」  いつものように生徒会室へは向かわず、第一会議室に足を向ける。基本的に通常の会議室は全ての生徒が利用することが出来るため、施錠もしていないから職員室にカードキーを取りに行く必要がない。  便宜上、第一から第七会議室までの番号が振り分けてあるが、全て同じ造りだ。これらは主に親衛隊や決まった集合場所を持たない委員会が集会に使っていて、この会議室で今日、俺の親衛隊の初会合が開かれることになっている。  ドアの前に立ち、呼吸を調えてドアノブを捻った。集まった親衛隊員が何名いるのか知らないが、今日は幹部だという数名と顔合わせすることになっている。  会議室のドアを開け、長机に座っている面々を見渡した。一番奥の所謂上座が俺の席で、その席に一番近い俺から見て右隣りの人間が恐らく親衛隊長だろう。 「羽柴様、お待ちしておりました」 「!!」  その顔は俺がよく知る顔で、なのにまるで他人のようなその声色に俺は思わず目を見開いた。

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