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[第8章]スクープ

 サッカーの試合こそ延期されてしまったが、6月最初の学校行事の球技大会を終えた翌日の今日も梅雨らしい本格的な雨が降り続いている。  球技大会が終わり、6月の学校行事は生徒総会が控えているだけで、今日の放課後は5月と6月を跨いだ試合に向けての練習と球技大会のせいで月初めに開けなかった風紀委員と合同の会議を開くことになっていた。  因みにこの会議は毎月一日に開催される定例会議で、去年は毎月きっちり開催されている。  4月は皆にボイコットされていたこともあり、会議どころじゃなかった。5月もバタバタしていて開催することが出来ず、そんなこんなで今年は今回が初めての合同会議だ。  定例会議は、その時々で議題に上った部活や委員会の代表も呼ぶことになっている。この会議はその月の行事や様々な問題点について話し合う会議で、その月の問題点はその月に解決することが大前提だ。  今月の会議は各種委員会や部活への予算の振り分けと6月中旬に控えた生徒総会について話し合うことになり、俺は準備のためにいつもより早めに登校して生徒会室に向かった。  今日は休日を挟んだ月曜日だ。実質的に球技大会の翌日ということで、いろいろと気まずく思わないでもない。  どんな顔をして鷹司に会ったらいいのかわからないし……、そう思っていたら、 (――カチャ) 「あ」 「よう」  俺より先に生徒会室にいた鷹司が何やら書類に向かっていた。 「あー、と。来てたのか」 「ああ。今日の会議の資料を作ったり、6月の行事予定を再確認しておきたかったからな」  あんなことがあったのに、鷹司はいつものように飄々としている。いつもと変わらない様子でそう言うと、おもむろにノートパソコンを立ち上げた。 「今月の行事は球技大会と生徒総会の二つだけか」 「ああ。一応、行事的には一年生の修学旅行や高校総体もあるけど、その二つは生徒会には直接関係ないからな。球技大会も主催は体育委員会だったけど」 「期末考査は7月の頭だったか?」 「うん。今月は球技大会と生徒総会だけ押さえとけば、後は期末のテスト勉強に専念出来るだろ。それと、今日の放課後の定例会議な」 「なるほど。生徒総会が一番厄介そうだな」 「まあな……、ってそうか。もしかして鷹司、去年は参加してないとか言う? 生徒総会」 「…………」  去年の鷹司は授業もサボりがちで、学校行事にも殆ど顔を出していないと聞く。どうやら去年の生徒総会もサボったようで、鷹司は気まずそうに俺から目を逸らした。 「……去年はどんな感じだったんだ、総会の準備」 「んー、中等部の時とそんなに変わらないんじゃないの。まあ、俺は中学までは役員じゃなかったから何とも言えないけど」 「初等部と中等部は学校側からの支援があるから高等部とは全く違うはずだ。悪いが教えてくれ」  そんないつもと変わらない鷹司の様子に正直、ホッとした。それと同時に、なかったことになったハプニングを思い出すと悪戯に心が騒いだ。  鷹司はまるで最初から何もなかったかのようにいつもの鷹司で、胸のもやもやが治まらない。 「あのな。クマの、な」 「え?」 「あ、いや。なんでもない」  何か言いかけた鷹司だったが、まるで何もなかったかのようにまたパソコン画面に向き直る。と、その時、 「ちょっと、鷹司、羽柴! これどう言うこと?!」  今朝は来るはずのない日下部の雄叫びで、それまで静かだった生徒会室の静寂が破られた。

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