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04 星矢side (親衛隊長)
初めてのスキャンダルに飯旨 ……、とはなかなか行かないのが世の常だ。羽柴が初めて学校新聞(号外)の一面を飾った。しかも『熱愛発覚』との見出しのゴシップ記事だ。
生徒会の会長と書記の熱愛ってことで、俺(腐男子)的には微妙なとこ。これが王道転校生と副会長だったり、会長と平凡補佐とかなら萌えるんだけど。
羽柴には今まで惚れた腫れたの噂は全くなかったから、一応はスクープってことになっている。だがしかし、蓋を開けて見れば寝ぼけた鷹司が羽柴にキスし掛けただけで色っぽい話は何もなかった。
おまけに役員同士だから、親衛隊からの制裁もない。まあ、うちの学校は平和な学校だからそんな過激なものがあるはずもないんだけど、イマイチ俺的には盛り上がりに欠ける。
親衛隊員にもこのスクープは歓迎ムードがあって、誰もが鷹司様がお相手なら応援しなきゃって空気が漂ってて、なんか生温い雰囲気なんだよな。
せっかくの熱愛スクープなのに。もちっとこう、色気があれば。
羽柴がスクープされたことで、俺達、羽柴の親衛隊は緊急集会を開いた。隊員は毎日少しずつ増え続けてはいるが、まだまだ鷹司や椿野の足下 にも及ばない。
おまけに羽柴があれは事故だったと釈明すれば、隊員の大半は嫉妬するどころか残念がっていた。
「岡崎君、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
ただ、親衛隊が出来る前から羽柴のことが好きな岡崎君だけは、複雑な表情をしていた。岡崎君は羽柴にとってただの後輩というより友達の一員のようで、隊員から制裁……、はないだろうが、嫉妬の対象になるのを避けるために岡崎君には副隊長をやって貰っている。
どうやら岡崎君が言うには真剣に告白してフラれてるらしいけど、どうも羽柴にはその自覚がないようで態度は告白前と何も変わりがないらしい。
「これが本当のスクープならなあ……」
なんて、親衛隊長らしからぬ発言もしてしまうってなもんだ。俺が高校受験で全寮制の男子校を選んだのは、少しでも腐男子ライフを体験したかったからだから。
それにしても、会長と友達になっときながら、なんかニアミスしたような中途半端な気分だ。
「けど、これどう見てもキスしてるよなあ……」
羽柴は口の端にされたとか言ってたが。そういや、子供の頃は両親や兄貴達からも口にキスされてたとか言ってたし、もしかしてファーストキス云々の自覚が薄いのかも知れない。
家族はファーストキスの対象には入らないのは皆の知ることとしても、事故云々を置いといて、鷹司とキスしたことも羽柴はなんとも思ってないのかも知れない。
なんとなく。なんとなくだけど、鷹司はいつもと変わらないように見えて、実は意識しまくりのような気がする。
羽柴にしてもスクープされてからぼんやりすることが多くなったような気もしないでもないが、はてさてどうなることやら。
鷹司とくっつく、くっつかないは別にして、ちょっとは恋愛に意識を向けてくれればと願わないでいられない。
腐男子云々は置いといて、羽柴にはいい恋愛をして欲しいし。うちにいれば自然とその対象は同性(男)になるけど、それもいずれはいい経験になるんじゃないかな。
「……とか、完全に人ごとじゃん」
「は? なんか言いました?」
「いいえ。なんにも」
それはもしかして自分にも当て嵌まることで、だがしかし、俺はここに来るまで共学校に通っていただけに同性に恋愛感情は沸きそうにない。
羽柴は物心ついた時から周りには女の子がいない状態なわけで、俺とは少々勝手も変わって来るだろう。
「もしかして、もしかしてくれないかな……」
「?」
腐男子だとかは、この際置いといて。このスクープがきっかけになれば。そう思わずにはいられなかった。
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