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4月 和樹はガラケーユーザー

「和樹か~。じゃあカズって呼んでいい?」  俺とてっちゃんは今、購買がある建物内のベンチに座ってる。  俺はもらったアメちゃんを口の中で転がすように舐めながら、彼の問いに頷く。 「俺コース変えたから、近くに話せる人いなくて、超さみしーんだよね。良かったらこれからも仲良くして?」 「別にいいけど、てっちゃんAクラスじゃん。俺はBだし、クラス違うなら会わないっしょ?」  俺はアメちゃんを、奥歯で噛み砕いてから答えた。てっちゃんが悲しそうな顔をしたが無視だ。 「それでもいいのか?」 「いいよ~。これからも会うし」 「?」  てっちゃんは意味深な発言をしたが、目の前にスマホを出されて話は変わった。 「アド交換しよ。あ、NINEのがいい?」  出たNINE。俺の苦手なやつ。 「アドレスで良いよ。メールしかしねぇし」  俺はハァーとため息を吐き、自分の携帯を取り出した。それを見て、てっちゃんは目を丸くした。 「うっわー。カズまだガラケー? 逆にすげーな」  そう、俺は未だにガラケーユーザー。そんなに使わないし何も困ることはないのだが、やっぱり恥ずかしい。 「そーだよ文句あっか! 連絡取れりゃ何でもいいだろ!」  まぁそうだよねと言って、てっちゃんはスマホを近づけた。 「じゃ、アドとケー番送るわ。本当にメールはできる?」 「そんくらいできるわ!」  俺はてっちゃんはと互いにアドレスを交換する。誰かと連絡先を交換するのは、久しぶりだった。

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