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4月 和樹、キラキラ王子と友達になる

「サンキュ。これからよろしくな!」 「ああ。またな、てっちゃん」 「あ、カズもうひとつ」  俺が今度こそ踵を返そうとしたら、またてっちゃんに呼び止められた。 「今度は何だよ」 「目薬あるなら使いな。赤いよ」  言われてみれば、少し痒くなってきた。 「お前が言うから、痒くなったじゃねーか!」  ごめんごめんと、てっちゃんはケラケラ笑う。 「だって今のカズ、超~色気あるよ。鏡で見てみたら?」 「へ……?」 「カズってさ。素朴な顔してっけど、案外カワイイからね。気をつけなよ」  今更言われなくともわかってるわ! と返そうとしたが、てっちゃんの次の言葉で、俺は思わず口を閉ざした。 「おめーも俺と同じ、ヒラ顔だし」 「……ヒラ顔?」 「そ、平凡の『平』でヒラ顔。俺の周りイケメン率高くてさー! カズ見ると、すっげー安心すんの」  ヤツは何を言ってるのだろうか……。 「お……お前は、キラキラ王子様じゃねーか!!」 「あはは。知ってる」 「……」  てっちゃんは人を逆撫でするのが趣味らしい。 「でもカズは愛され顔だよ!」 「んなこと言われても嬉しくねーよ」  俺はムスっとしてみせた。  てっちゃんは褒めてるんだって、と俺を見てニコリと笑った。 「こーゆーときは、ありがとって言うもんだ。カズらしいっちゃカズらしいけどね」  てっちゃんはベンチから立ち上がり、俺に向かって声をかけた。 「そろそろ行くわー。これからヒラ友同士仲良くしよーぜ」 「ああ……ってヒラ友?」  意味を確認しようとしたが、既にてっちゃんは去っていた。 「ヒラ友……」  久しぶりに味わった、友達という感覚。  気がつけば昼時を過ぎていて、意外にも話しこんでしまったようだ。  てっちゃんと過ごした時間は、とても気楽で自然体でいられた。  クラスは違っても彼のような友人ができたのは、この一年を過ごしていく上で、とても心強い。  それにしても。 「ヒラ友って……ネーミングセンスねぇな」  友達第一号は、ちょっと不思議なキラキラ王子様だった。

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