7 / 118
4月 和樹、キラキラ王子と友達になる
「サンキュ。これからよろしくな!」
「ああ。またな、てっちゃん」
「あ、カズもうひとつ」
俺が今度こそ踵を返そうとしたら、またてっちゃんに呼び止められた。
「今度は何だよ」
「目薬あるなら使いな。赤いよ」
言われてみれば、少し痒くなってきた。
「お前が言うから、痒くなったじゃねーか!」
ごめんごめんと、てっちゃんはケラケラ笑う。
「だって今のカズ、超~色気あるよ。鏡で見てみたら?」
「へ……?」
「カズってさ。素朴な顔してっけど、案外カワイイからね。気をつけなよ」
今更言われなくともわかってるわ! と返そうとしたが、てっちゃんの次の言葉で、俺は思わず口を閉ざした。
「おめーも俺と同じ、ヒラ顔だし」
「……ヒラ顔?」
「そ、平凡の『平』でヒラ顔。俺の周りイケメン率高くてさー! カズ見ると、すっげー安心すんの」
ヤツは何を言ってるのだろうか……。
「お……お前は、キラキラ王子様じゃねーか!!」
「あはは。知ってる」
「……」
てっちゃんは人を逆撫でするのが趣味らしい。
「でもカズは愛され顔だよ!」
「んなこと言われても嬉しくねーよ」
俺はムスっとしてみせた。
てっちゃんは褒めてるんだって、と俺を見てニコリと笑った。
「こーゆーときは、ありがとって言うもんだ。カズらしいっちゃカズらしいけどね」
てっちゃんはベンチから立ち上がり、俺に向かって声をかけた。
「そろそろ行くわー。これからヒラ友同士仲良くしよーぜ」
「ああ……ってヒラ友?」
意味を確認しようとしたが、既にてっちゃんは去っていた。
「ヒラ友……」
久しぶりに味わった、友達という感覚。
気がつけば昼時を過ぎていて、意外にも話しこんでしまったようだ。
てっちゃんと過ごした時間は、とても気楽で自然体でいられた。
クラスは違っても彼のような友人ができたのは、この一年を過ごしていく上で、とても心強い。
それにしても。
「ヒラ友って……ネーミングセンスねぇな」
友達第一号は、ちょっと不思議なキラキラ王子様だった。
ともだちにシェアしよう!