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4月 和樹、ぼったくられる

 購買から寮の部屋へ戻ると、千葉が共有スペースのソファーで寝てた。相変わらずニット帽を被ってる。  寝るときも被ったままなのかと思ったが、起こすと悪いのでそのままにして個室へ戻る。  時計を見ると午後二時過ぎ。夕食までヒマだな。  明日の支度……は特にすることもない。入学式も始業式も、ただ誰かの話を聞いてボーッとしてればいいもんな。  ケータイを見ると新着メールが一通入ってた。てっちゃんからだ。  タイトルに『奥村哲也』とフルネームを入れてるところに驚いた。意外とちゃんとしたヤツらしい。  本文は『これからよろしく』とシンプルなものだった。  俺もよろしくと返そうと画面をスクロールしていくと、随分下に『追伸』とあった。 「何だこれ?」  さらに下へ進める。 『アメちゃん代はジュース一本でチャラね(笑)』 「どこのぼったくりだー!」  俺は思わずケータイをベッドに叩きつけた。  久しぶりの寮生活に緊張していたのか、俺はすっかり眠りこけてしまったようだ。  目覚めたら時計の針は夜八時を指していた。  だが俺はこの時、本当の『ヒラ友』の意味をわかっていなかった――。  俺は昼食を某キラキラ王子のせいで食べ損ねていた。そりゃ腹減るわと思いながら、食堂へ向かうことにする。  食堂の利用時間は決まっていて、夕食時は午後五時~八時までしか開いてない。だけど俺にはあるツテがある。そのおかげで利用時間など気にせずに、食事を摂れるのだ。  夜はまだ肌寒いと思って、上着を羽織る。財布やらケータイやらを持って部屋を出た。  千葉の姿は見られなかった。風呂かどっかに行ってるんだろうと思い、俺はそのまま食堂へと向かった。

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