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4月 和樹、入学式で記憶を飛ばす

 入学式は特にやることはなかった。  俺ら在校生は、体育館の後ろでクラスごとに集まり、式の間ずっと座ってる。  席は自由だから、俺は千葉の横に座った。というよりも、他の場所には座りづらかったのだ。  初々しい新入生は、どこかソワソワしながら着席してる。制服もきっちりしてて、あんな頃もあったなぁと昔を懐かしむ。  なぜかこの学校では、入学してから一ヶ月は制服を正しく着ましょうというルールがある。ちょっとヤンチャしてる不良っぽいヤツも、それを守ってるから驚きだ。  まぁ髪色とかピアスとかは自由らしいが……。  これらは校長が決めたことだが、いまいち彼の線引きはわからない。  チラッと横を見る。ニット帽男は腕を組み、ただ前を見ていた。  正直意外だった。千葉はこーゆー場で、絶対寝るタイプだと思ってたからだ。まぁただの偏見だが。  式典は基本的に生徒会が仕切る。だが去年色々あった俺は、誰が役員なのか実はよく知らない。  今は校長先生のお話の時間だ。  あれ……おかしい……今朝は寝坊したはずなのに……睡魔が……。  顔と名前が一致しない校長先生のお話は、俺を束の間の眠りへと誘った。

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