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5月 不審者の正体

「そーいえば、何で俺が瀬川だってわかったんです?」 「素朴で地味だけどカワイイ顔って聞いてたからさ。あ、こいつじゃんって」 「それ、誰情報ですか?」 「ん? 奥村から」  あのキラキラ王子、どんだけ顔広いんだよ。ここまでくると情報屋でもやってるんじゃないかと思うわ。 「ああ、忘れてた。俺は3Aの北村秀一(きたむら しゅういち)だ。これでも文系のトップなんだぜ」 「へー見えないっスね」 「意外と毒舌なんだな。おもしれーな、お前」  北村先輩は、外見と中身のギャップがありすぎる気がする。  西洋人形のように整った外見とは裏腹に、中身は普通の高校生だ。  共通の趣味(?)もあるし、先輩とはいえ気兼ねなく話せそうだ。 「で、先輩の仕事って何ですか?」 「俺の仕事か……」  さっきまで明るかった先輩の表情が曇る。何か悪いこと言っちゃったのかな。  元々静かな裏庭が、さらに静まり返ってしまった。  そのとき、静寂を切り裂くように第三者の声が割りこんだ。 「会長ー! どこですかー! いたら早く副会長に謝ってくださいよ!」  ――会長?  目の前の男を見る。彼は明らかにヤバいという顔をして、急に俺の腕を掴み、そのまま声とは逆の方角へ走り出した。 「え、ちょ! どこ行くんスか!」 「話は後だ! 逃げるぞ瀬川!」  俺、何もしてないっスけど! という心の叫びは出せずに、俺は先輩に連れ去られた。

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