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5月 生徒会室

 浅井千晴(あさい ちはる)が通話を終えると、側にいた久世風雅(くぜ ふうが)が声をかけた。 「会長、見つかりました?」 「……逃げられたそうだよ」  千晴は自分の机に戻り、山積みになった書類を片づけていく。その姿からは苛々オーラが漂っている。この状態の千晴に声をかけられる程、風雅の神経は太くない。この場は退散するに限る。 「あ、俺、宮崎さんとこ行ってきますねー」 「……」 「……会長も探してきます」  風雅はそそくさと生徒会室を出た。  ひとり残された千晴は、この仕事の山の原因である男を呪った。 「秀一の野郎、覚えとけよ」  千晴は再びスマホを取り出し、ある男に連絡を取った。 「辰己? 僕だけど……」

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