27 / 118
5月 和樹とバ会長
「いやー、悪かったな瀬川」
「ほんとっスよ。何なんスか、あんた」
俺は会長に連れ去られ、これまた人目につかない物陰に来ていた。急に走ったせいか、呼吸が乱れる。
「てか、あんたが生徒会長かよ。この学校大丈夫か」
「お前生意気だぞ。誰に向かって、その口訊いてんだ」
「バ会長にですけど」
俺はこのバ会長を敬う気は、さらさらなかった。
「つーか、会長が仕事サボっちゃダメでしょ」
「お前に言われたかねーよ」
バ会長は俺を引き寄せ、耳元で囁く。
「あんまり隼人を困らせるなよ。いまにぶっ倒れるぜアイツ」
「……バ会長と委員長って仲良いんスね」
「バ会長は止めろ」
しょうがない。『バ会長』は心の中で呼ぶか。残念だけど。
つーか距離近いんだよ。離れろバ会長。
「会長サンは委員長の友達スか?」
「ああ一番の親友だ」
会長は何だか嬉しそうだ。委員長からそんな話聞いたことないけど。
こーゆー信頼関係てのが、正直羨ましい。
「どーかしたか、瀬川?」
「何でもないっスよ会長。俺そろそろ行きますわ。怖~い委員長がキレちゃうんで」
会長の話を聞いて、委員長に申し訳ないなという気持ちが湧いてきた。
「もう行くのか。寂しいなー」
「寂しいって、何スか」
「今日のことはお互いに内緒……だろ? また一緒にサボろうぜ!」
生徒会長にあるまじき発言だな。
「俺でよければ、付き合いますよー」
「マジか! じゃ連絡先交換しよ。俺が呼んだら必ず来いよ!」
「ただの呼び出しじゃないスか。ほどほどにしてくださいよ……あれ?」
俺は尻ポケットに入れてたはずのケータイがないことに気づいた。
おそらくバ会長と出会ったあのベンチだ。取りに行かなきゃならない。めんどくさいな。
「どうした瀬川?」
「あんたのせいでケータイ落としたんですよ」
「俺のせいかよ。何か悪いな」
「いいっスよ。じゃ、またサボりましょーね」
俺はケータイを探しに、例のベンチへと引き返した。
ともだちにシェアしよう!