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5月 和樹とバ会長

「いやー、悪かったな瀬川」 「ほんとっスよ。何なんスか、あんた」  俺は会長に連れ去られ、これまた人目につかない物陰に来ていた。急に走ったせいか、呼吸が乱れる。 「てか、あんたが生徒会長かよ。この学校大丈夫か」 「お前生意気だぞ。誰に向かって、その口訊いてんだ」 「バ会長にですけど」  俺はこのバ会長を敬う気は、さらさらなかった。 「つーか、会長が仕事サボっちゃダメでしょ」 「お前に言われたかねーよ」  バ会長は俺を引き寄せ、耳元で囁く。 「あんまり隼人を困らせるなよ。いまにぶっ倒れるぜアイツ」 「……バ会長と委員長って仲良いんスね」 「バ会長は止めろ」  しょうがない。『バ会長』は心の中で呼ぶか。残念だけど。  つーか距離近いんだよ。離れろバ会長。 「会長サンは委員長の友達スか?」 「ああ一番の親友だ」  会長は何だか嬉しそうだ。委員長からそんな話聞いたことないけど。  こーゆー信頼関係てのが、正直羨ましい。 「どーかしたか、瀬川?」 「何でもないっスよ会長。俺そろそろ行きますわ。怖~い委員長がキレちゃうんで」  会長の話を聞いて、委員長に申し訳ないなという気持ちが湧いてきた。 「もう行くのか。寂しいなー」 「寂しいって、何スか」 「今日のことはお互いに内緒……だろ? また一緒にサボろうぜ!」  生徒会長にあるまじき発言だな。 「俺でよければ、付き合いますよー」 「マジか! じゃ連絡先交換しよ。俺が呼んだら必ず来いよ!」 「ただの呼び出しじゃないスか。ほどほどにしてくださいよ……あれ?」  俺は尻ポケットに入れてたはずのケータイがないことに気づいた。  おそらくバ会長と出会ったあのベンチだ。取りに行かなきゃならない。めんどくさいな。 「どうした瀬川?」 「あんたのせいでケータイ落としたんですよ」 「俺のせいかよ。何か悪いな」 「いいっスよ。じゃ、またサボりましょーね」  俺はケータイを探しに、例のベンチへと引き返した。

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