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5月 千葉と伝言
「辰己さんへの言い訳考えねーとなぁ」
千葉は走り去る同室者を見て、顔をしかめた。
だが友人の悩みを放っておけないのも事実だ。ヤツがケータイを落としたという裏庭へと足を進めようとして、ふと立ち止まる。
「俺、アイツのケータイ知らねぇ」
和樹は基本的にケータイ不精だ。ヤツが使ってるところを見たのは、精々アドレスを交換したあの日だけ。
新学期になって一ヶ月も経つというのに、同室者がケータイをいじってる姿がまったくイメージできなかった。
「キレられる覚悟で隼人さんとこ行くか……いや、やっぱり辰己さんとこだな」
千葉は風紀委員の会議室である307号室へ向かうことにする。人騒がせな同室者のせいで、足を運ぶ機会が増えた場所だ。
「それにしても……」
千葉は辰己から預かった伝言を思い出す。
「野良ネコ探しって、どんな仕事だよ」
つくづくこの学校は平和だと、千葉は頬を緩めた。
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