31 / 118
5月 和樹、寮長室へ行く
俺はノムさんこと野村北斗 センパイがいるであろう、寮長室へ向かった。
こんな所に来るのは、もちろん初めてだ。いくら相手があのノムさんでも、やっぱり緊張する。
深呼吸をひとつしてから、扉の向こうへと声をかける。
「失礼しまーす。ノムさんいますか?」
入ってこい、と返事があったので扉を開けて中へ入る。
寮長室って言っても、基本的に俺らの部屋と同じ内装だ。ただ、寮長はひとり部屋らしい。寂しくないのかな。
机に向かってるノムさんは、何かの書類と格闘していた。
「どーしたんだ和樹。こんな所に」
「俺ケータイ落としちゃったんスけど、届いてませんかね?」
「いや、届いてないぞ。どんなヤツだ?」
俺は自分のケータイの特徴を、できるだけ詳しく伝える。ノムさんはそれをメモしていた。
「よしわかった、俺も探すよ。そうだ和樹、ケータイ止めたのか?」
「ケータイとめる?」
ケータイが無いのにケータイとめる?
俺の混乱が顔に出たのか、ノムさんが助け舟を出してくれた。
「電話会社に連絡して、一時的に止めてもらうんだ。こーゆーのは俺がやっておくから、和樹はもっかい探してこい」
「マジすか! ありがとーございます」
これでケータイ問題は片づいたのかな。あ、でもノムさんの仕事中にお邪魔してしまったことを詫びねば。
ともだちにシェアしよう!