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5月 和樹とノムさん
「ノムさん、忙しいとこすんませんね。仕事大変でしょ」
「これくらい何ともないぞ。あと少しまとめて、それから生徒会へ提出するだけだ」
「へー。生徒会も忙しそうですね」
あのバ会長がトップなら尚更か。ご愁傷様。
「ああ、そうだ和樹。ずっと気になってたんだが……」
「何スか?」
「陽平とは上手くやれそうか?」
うわー。ノムさんってすげーな。この人はこれでも寮長なんだってたまに思うよ。こんな俺のことを、まだ気遣ってくれてるなんて……。
「アイツ超良いヤツですね。距離感が丁度良いって言うか……あんまり干渉し過ぎないから楽です」
「それは良かった」
ノムさんは目元に笑いシワを作って、安心したように微笑んだ。
「ちなみに寮の部屋って、クジで決めるって本当スか?」
同室者が千葉であることに、何か意味があるのかもしれない。そう思ったからノムさんに聞いてみることにした。
「それは寮長になったらわかるさ。ま、和樹には無理な話かなー」
「いいっスよ。俺、別に寮長とか責任のある仕事向いてないんで」
「お前らしいな。ほら、もう行け。ケータイは俺に任せろ!」
「あざーすノムさん。俺、もっかい落とした場所探してるんで!」
難しいことはよくわからないが、こーゆーことはノムさんに任せればすべて解決できちゃうのだ。
それが我らBクラスの寮長の、すごい所であった。
俺はノムさんの部屋を出て、裏庭のベンチに向け歩き出した。
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