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5月 ケータイの行方

 可愛い後輩が退室するのを待ってから、野村は机に置いてあるファイルの中から、和樹の個人情報を取り出した。メールアドレスや番号を見るためである。  しばらくすると、珍しい人物から着信が入った。 「よぉ、翼じゃねぇか。どーかしたのか」 『携帯電話を預かっている。落とし主は瀬川和樹。うちの生徒か?』 「さっすが、良いタイミングだわ。そいつ、今、裏庭に向かってるらしい。届けてくれないか?」 『わかった』  ブツリと通話は切れた。思いがけない人物の介入で、ケータイ紛失事件は瞬く間に解決した。 「ケータイは翼に頼んだから、あとはコレだな」  野村北斗は完全仕事モードに入り、書類と向き合った。

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