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5月 風紀委員会vs生徒会①

「辰兄……」  言わずと知れた、副委員長・江川辰己その人だった。  突然現れた辰兄は俺の目の前にやってきて、両手をがっしりと握った。 「よくやったぞ、和樹!」 「へ?」 「これで今日の仕事は終わりだ。もう飯は食ったか? まだなら一緒に――」 「いや、ちょっと、話が見えないっス」  自慢じゃないが、俺は今日も仕事をサボったという自覚がある。辰兄の勘違いじゃないのか。  辰兄はそのまましゃがみこみ、こてつを抱き上げた。  こてつは抱っこがキライなので、しきりに身を捩りイヤだイヤだとアピールする。だが辰兄のがっしりとした腕に抱かれて観念したのか、こてつは大人しくなった。  辰兄はそのまま校舎内へと進もうとする。これには俺だけじゃなくて、生徒会のふたりも驚いた。 「どこに行くんだ、辰己?」  と副会長さん。 「どこって風紀の所さ。和樹、お前も来いよ」 「それは困る。その猫は、僕ら生徒会が見つけたものだ。こちらで処理する」 『もの』とか『処理』とか、いちいちムカつく言い方をする副会長さんを、俺は好きになれそうにない。 「そう言われてもな、こっちだって仕事なんだ。わかってくれよ、千晴」 「仕事ってどういう意味です?」  今まで黙ってた久世ちゃんが口を挟む。 「野良ネコ探しさ」 「は?」  珍しく辰兄以外の全員がハモる。

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