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5月 千葉、哲也に絡まれる
千葉は自販機に小銭を入れ、何を飲もうか迷っていた。
しばし逡巡していると後ろから手が伸びてきて、勝手にボタンが押される。驚いて振り返ると哲也が立っていた。
ヤツは身をかがめジュースを取り出し、何のためらいもなくそれを飲んだ。
「……何やってんだ、奥村」
「見ればわかるでしょ。ジュース飲んでんの」
哲也は平然と言ってのけた。コイツと話すようになってから一ヶ月近く経つが、いまだによくわからない。
「ふざけんな、金返せよ」
「情報料だよ千葉っち」
ちなみに俺は、このふざけた呼び名を許可した覚えはない。
「情報料だと……?」
「そう。安いもんだよね」
哲也は時々情報料だと言って、千葉にたかるのだ。
「そういうのいらねーから、どっか行けよ」
千葉はもう一度小銭を入れ、缶コーヒーを選ぶ。さっさと買ってゆっくりしたかったのだ。しかし――。
「カズが生徒会室に連れてかれたらしいよ」
「!」
プルタブを開けようとした千葉の動きが、ピタッと止まる。
そんな千葉を見て、哲也はその笑みを深めた。
「……詳しく聞かせろ」
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