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5月 宮崎先輩は良い人!
「待ってください、先輩!」
階段の踊り場に差しかかったところで、俺は宮崎先輩に会うことができた。
先輩は振り返って俺を見る。
「どうした?」
「先輩との話、途中で終わっちゃったなーって思って」
「あれは北村が悪い。君は巻き込まれただけだろう?」
「そーなんですよ! すべてはあの人が原因です」
俺がバ会長を思い出してむくれると、宮崎先輩は大変だったなと俺に味方してくれた。
「そういえば、先輩も生徒会役員ですか?」
「ああ、紹介が遅れたな。俺は3Bの宮崎翼だ。書記を務めている」
ノムさん以外で、Bクラスの先輩と話すのは初めてだ。
「じゃあ、本当に先輩ですね。俺は2Bの――」
「わかっている、瀬川和樹だろ。もう野村には連絡したのか?」
「ノムさん……?」
いきなり出てきたノムさんの名前に、俺は混乱する。
それを見た先輩は、優しく微笑んで教えてくれた。
「携帯は壊れていないはずだ」
「あ!」
思い出した。俺が生徒会室なんかに来たのも、そもそもケータイ紛失事件が原因だった。
俺はケータイを取り出し、えいっと電源ボタンを押す。
「……ついた!」
「良かったな、瀬川」
宮崎先輩は自分のことのように喜んでくれた。
そして俺に一枚のメモを渡す。そこにはとてもキレーな字で、数字やアルファベットが書かれてた。
「俺の連絡先だ。また面倒事が起きたら、いつでも相談してくれ」
「この場でも交換できますよ?」
俺がそう聞くと先輩は参ったなという顔をして、ポケットからそれを取り出した。
「悪いな瀬川。どうも俺は機械が苦手なんだ」
「俺と同じですね!」
それは宮崎先輩らしい、シンプルな黒のガラケーだった。
この学校に来てから会う久しぶりのガラケーユーザーに、俺は親近感を抱いた。
「じゃあ、俺から連絡しますね。頑張って登録してくださいよ!」
「努力する」
宮崎先輩はまだまだ仕事なので、俺は先輩を見送り寮へと歩き出した。
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