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5月 あのバ会長!
宮崎先輩と別れてしばらく歩くと、千葉と遭遇した。
何でもてっちゃんに、俺が生徒会室に連れてかれたと聞いて、迎えにきてくれたらしい。
さすが俺の同室者。
ふたりで寮に向かって歩いてたら、珍しく千葉から話しかけてきた。
「なぁ、清水ってヤツ知ってるか?」
「清水~?」
俺は記憶の引き出しを探ってみる。しかし、そんな名前のヤツに覚えはなかった。
「知らねーよ。誰そいつ」
「さぁ?」
「千葉が知らないヤツを、俺が知ってるはずねーだろ!」
「……だよな」
何だか腑に落ちない様子の千葉くん。
いつもと違う千葉に不信感を抱きながらも、俺はそれ以上追求しなかった。
◇
シャワー室から出ると、千葉はソファーに座ってぼーっとしてた。
本当にコイツ、さっきから変だな。
「千葉ー! シャワー上がったよ」
「ん……? あぁ……」
寝ぼけてるのかコイツ。
反応が薄い千葉の目の前で、手をヒラヒラと振ってみる。
「千葉くーん?」
「!」
「……へ?」
突然ソファーから立ち上がった千葉が、俺の胸倉を掴み上げた。
ちょっ!
シャツ伸びちゃうからやめてくれ!
慌てて千葉を引き離そうとする。
だが千葉の目はマジになっていて、俺の力ではヤツに勝てそうにない。
「あのー、千葉さーん?」
ということで、まずは交渉する。俺は交渉人・瀬川和樹だ。
「Tシャツ伸びちゃうから、この手を離してくれませんかねー?」
すると俺の交渉が効いたのか、千葉は手を離し、俺から後退った。
「千葉……?」
「……瀬川、お前」
そう言ったきり、千葉はまた口を閉ざしてしまった。目線も逸らされる。
おい。そんなことされたら、余計気になるだろうが。
俺は千葉が下がった分だけ、足を進めた。
「言えよ。気になるじゃねぇか」
俺はいつもよりトーンを下げて、怒ってるぞアピールをする。
今までの人生経験からいうと、これが実に効くのだ。
「……首」
「くび?」
千葉はゆっくりと、俺の首筋を指した。
「……咬み痕、ついてる」
「は!?」
俺は壁にかけてある鏡へ走った。
狭いシャワー室に鏡は無いので、意識すらしなかった。
千葉に言われるまで、まったく気づかなかったのである。
当然、犯人の目星はついている。
間違いなく、あの時だ。
「……あのバ会長!」
その後、千葉に質問攻撃されたのは言うまでもない。
【5月 新しい出会い】了
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