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6月 A寮の寮長

 吉岡清太(よしおか せいた)は寮長を引き受けたことを、いまさらながら後悔した。  A寮は文理コースの人間が集まる寮であり、勉強一筋の彼らはこういった行事に、無関心な者が多い。しかし学校行事は、全員参加が基本だ。やる気のない彼らを、どう動かしたらいいのか、歴代の寮長を見習っておけば良かった。  生徒会へ提出する書類を仕上げるために、自室へと向かう。  途中何人かの生徒に会ったが、皆一様に清太から距離を置いた。自分が陰で陰湿眼鏡と笑われていることは知っている。性格の悪さが外見に滲み出ていると、揶揄する者もいた。 「本当……なんで僕なんだろう」  清太は自分を寮長に任命した先代を恨んだ。

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