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6月 王子と下僕
「お~上手くいったようだね、千葉っち」
「何やってんの、てつ?」
哲也と風雅は校舎二階にある、2A教室前の廊下にいた。ここからは裏庭が見下ろせる。
「ふふ……いいね、流石だよ、千葉っち」
「……端から見ると、変だぞお前」
「ヒドい言われようだな、風ちゃん」
哲也が外を指すと、風雅もつられて窓に近寄る。見下ろした先に、丁度ふたりが腰かけるベンチが見えた。
「千葉ってどんなヤツなんだ?」
「面白い男だよ。イジリ甲斐があるしね」
クスクスと笑う哲也。
「まぁ、見てなって」
いつも細められている目に、妖しい火が灯った。
「いまに面白いことが起こるからさ……」
風雅はこの状態の哲也を見るのは久しぶりだった。こうなったとき、自分はあくまで聞き役に徹するのが、彼との上手な付き合い方だ。
「わかったよ、王子様」
そして自分は下僕になる。
一年前から続く、大切な決めごとだ。
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