83 / 118

6月 古傷

 天候が悪い日は、昔の古傷が痛む。予報では夕方から雨になるらしい。ジクジクと痛む額を手で覆い、千葉は食堂近くのベンチで休んでいた。  疲れすぎて食欲がないとはよく言うが、まさに自分はそういう状態だった。  でもアイツは――。  千葉が同室者のことを考えていると、寮長の野村がやってきた。 「大丈夫か? 体調悪いならシフト変えるぞ」 「いや大丈夫ですよ。この天気のせいです」 「そうか……無理はするなよ」  はい、と返事をしかけて、千葉は例のことを思い出した。 「そういえば瀬川のヤツ、飯買いにきました?」 「いや、俺は見てないが。もしかして、まだ昼食ってねーのか?」 「多分そうですね。俺まだ休憩中だし、届けましょうか?」 「頼めるか? だけどお前……」 「このくらい大丈夫です」  千葉は使い捨て容器に入れたカレーを野村から受け取り、和樹のいる校門横のテントに向かった。  歩いている最中、ポツリと雨粒が肩に当たったような気がした。

ともだちにシェアしよう!