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6月 和樹、保健室で目覚める
――あの人が戻ってくるよ和樹。
たとえ君が忘れてても、あの人は和樹に会いたくて仕方ないみたい。
また来るからね、和樹……。
◇
冷え切ったはずの身体がポカポカと温かい。
これは夢?
てか、夢ん中にまで出てくるんじゃねーよ奏太。
俺はお前が言う『あの人』のことなんか知らねーんだからよ。
お前のせいで俺はボロボロだ。
どう責任取ってくれるんですかー?
あ、そういえばおでこ冷たい。冷えピタかな。
そうだそうだ。
俺、雨に濡れてビオトープに落ちて――訂正、落とされて、熱出したんだった。
よく死ななかったよなー俺。
つーか、俺もう起きてるんだよな。
ただ何となく目を開けるのが怖いとゆーか、恥ずかしいとゆーか。
多分俺が寝てるのは保健室のベッド。病院みたいな匂いがするからそう思った。
俺はそっと耳をすませる。クーラーの音しか聞こえない。
どうやら誰もいないようだ。
俺は意を決してベッドから起き上がった。
「……千葉?」
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