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6月 保健の先せ……
「そうだ瀬川。起きたなら熱計っとけ」
先生は俺に体温計を渡して、そう言った。
「寝てろって言ったの先生じゃないっスか。俺もっかい起きるの超しんどいんだけど」
「つべこべ言うな。追い出すぞ」
そう言うと先生は掛け布団を剥いで、俺を起き上がらせた。
さっさと測れとばかりの態度に負けて、俺は体温計を脇の下に挟んだ。
てかさっきから思ってたけど、この先生キレーな顔のくせに言葉遣いが荒々しい。
顔とセリフがまったく合ってないのだ。
そんな所は年相応とゆーか。
俺はこの先生が何歳なのか知らないけど。案外子供っぽい性格なのかもしれない。
ピピッと電子音が鳴った。
取り出して見る四十度とあった。平熱が三十五度台の俺からしたら、K点越えもいいところだ。
「先生ー。四十度あった。俺もうダメ」
「どれどれ」
先生が俺の首筋を触って熱を確かめる。ここってリンパ腺だっけ?
「悪いが校医の私から薬は出せない。そういう決まりなんだ。どうしてもヤバそうなら、そこのバカに頼んで購買で買ってきてもらえ」
「あれ? 購買に薬ありましたっけ?」
「そんなもん自分で探せばいいだろ」
なんちゅー無責任な校医だ。解熱剤くらいくれればいいのに、ケチなヤツ。
「さて瀬川。私はお前に聞きたいことがある」
「な、何ですか先生」
俺は背筋をビクリと震わせた。決して熱のせいではない。
俺の首を触る先生の手つきが、急に怪しくなったのだ。
先生の指がつーッと伝うたびに、俺の背中はゾワゾワした。
「お前どうして池に落ちたんだ? しかもこんな雨の中、傘も持ってなかったそうだな。いったい何があったんだ?」
真面目なシリアストーンで聞いてくる先生。
だがそれは顔と声だけの話で、先生の手は俺の身体を舐めるように触り続ける。
「ちょっ、止めてくださいよ。何するんスか?」
「言わないと、もっと酷いことするぞ」
先生の流し目がキラッと光ったかと思えば、いつの間にか先生の手は俺の服の中へ入ろうとしていた。
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