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6月 和樹、セクハラに遭う
瀬川和樹、十六歳。人生初のセクハラに遭っています。
てかこれ、セクハラってレベルかよ?
マジなのか。これはマジなのか!
「離せって! やめろっ!」
俺は身体中を這い回る手を押し退けようとするが、熱やら疲労やらでまったく力が出ない。
つーかこの先生、病人相手に何してんだよ!
「さっき着替えさせたときにも思ったが……瀬川、お前意外に肌白いな。身体の線も細いし、ちゃんと食ってんのかよ」
「よけーなお世話だ! これ以上変なことするとキレるぞ!」
「わかったよ。冗談だって」
ふふっと笑って先生は手を離した。
俺は身体を縮めて、少しでもヤツから距離を置こうとする。
いったい何なんだこのセクハラ校医。
「そんなに警戒するなよ。もうやらないから安心しろ」
そんなこと言われて、すぐに警戒を解くヤツはバカだ。
この男は危険人物だと、俺は脳ミソにインプットした。
「だが、私の質問には答えてもらおう。素直にならないと――」
セクハラ校医が、また腕を伸ばしてきた。これ以上逃げ場はない。
俺が観念しかけたそのとき、救世主が現れた。
「瀬川から離れろ、篠川」
眠りから覚めた千葉さんがセクハラ校医の腕をがっしり掴んで、ヤツをこれでもかというくらいに睨みつけた。
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