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7月 和樹、千葉がウザい
常にニット帽を被っているこの男、千葉陽平は俺の同室者だ。勉強もスポーツも器用にこなし、その上顔面偏差値が高いため、もしうちの学校が共学だったら確実にモテ男なのである。
もとはCクラスで陸上部に入っていたそうだが、色々あって怪我をして、それから辞めてしまったらしい。ニット帽の下に隠された古傷も、それに関係あるとかないとか。
詳しくは訊けないけど。
でも俺は千葉から話してくれるまで待つし、千葉も千葉で、前よりかは何か吹っ切れたそうだ。
初対面ではクールというか近寄り辛い怖い男だったのに、最近はキャラ崩壊が激しい。
というか心の親密度が近くなったような気がする。
十中八九、六月の新歓中に起こったあの事件がきっかけだろう。
あれから千葉との距離がグッと縮まったのだ。
もちろん、変な意味ではない。
「で?」
「は?」
俺が先月の出来事をフラッシュバックしていると、唐突に千葉が割りこんできた。俺も間抜けたような返事をしてしまう。
「お前、テストどうする? 何なら俺が教えてやろうか?」
イヤミだ。
確実にイヤミだ。
「Bコーストップの俺が直々に教えてやろうか?」
「ふ、ふざけたこと言うなよ! うちのコースは平凡の集まりだから、その中でトップって言ってもたかが知れてる!」
「全コースの中でも十番以内には入ってた」
「マジで滅べ!」
ウザい。千葉がウザい。
「もういい! 俺はお前には頼まない! 宮崎さんに教えてもらう!」
「は? どうしてあの人が出てくる。学年違うし……つーか、まだ生徒会とつるんでるのかよ。やめておけ。あの人は――」
ガン無視。千葉なんか知らん。俺は荷物を手に生徒会室へ向かった。
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