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7月 宮崎先輩の素顔
図書室から出た俺は、さあどこに行こうかと考える。
会長の話通りなら、万が一委員長に会ってしまったら、俺はきっと生きて帰してはもらえないだろう。それならば、まずは校舎から離れたほうがいい。
結局寮へ帰るしか道はなさそうだ。
俺は図書室を出て、まっすぐ寮への道を駆けた。
「あれ?」
道なりに進んでいると、前方にどこか見覚えのある後ろ姿を見つける。
こそこそと近づくと、やっぱり思った通りの人だった。
「宮崎先輩っ!」
俺が声をかけると予想通り、生徒会書記の宮崎先輩が振り返る。
が、先輩と目が合って、俺はすっとんきょうな声を上げてしまった。
「うええっ? 宮崎先輩……ですよね?」
「……ああ、瀬川か」
「眼鏡……どうしたんです?」
今日の先輩には先輩のトレードマークである黒縁眼鏡がなかったのだ。
俺は初めて眼鏡無しの先輩の顔を見たわけだが――。
「え、顔面偏差値高くね?」
そういうことだったのである。
こう言っちゃなんだが、宮崎先輩はいわゆる天才で、眼鏡かけているのも昔っから勉強ひとすじの、いわゆるガリ勉タイプだと思っていた。
ガリ勉=根暗、地味、運動音痴、顔面偏差値赤点レベル。これが俺の基準である。
それなのに眼鏡を取った先輩はきりっとしているけど、どこか甘い目元に、すっと通った鼻筋を持っていた。ほんのり陽に焼けた肌も男らしいし、そういえばガリ勉独特のなよなよ感がない。
たしかAの寮長が俺の思うなよっとした嫌われ者のガリ勉タイプだったと思う。実際てっちゃんたちもそう言ってたし。名前は知らないけど、とにかくその人と宮崎先輩は月とスッポンレベルに差があるのだ。
「どうした、瀬川?」
声をかけたはいいが、すっかり見とれていた俺に先輩の声がかかる。たしかに声もほどよい低さだ。これは女子が放っておかないだろう。ここは男子校だけど。
てか、俺の周り顔面偏差値T大並みなんだけど。
二年になってから出会った人たちを振り返る。その中で、俺自身は明らかに赤点レベルだ。
「瀬川?」
そして距離が近い。
今日の宮崎先輩は不思議なほどに距離が近い。
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