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7月 先輩がかっこよすぎてつらい

「先輩……ちょっと、近いです」  あははーと苦笑いしながら言うと、先輩ははっとした顔をして、慌てて距離を空けた。 「悪い、瀬川。俺、遠視だから瀬川の顔がよく見えなくて」  どこの乙女ゲーだよ、この展開。いや、俺が悪しきように考え過ぎなのか。 「眼鏡どうしたんです?」 「体育で割った」 「おおー。ワイルド」 「フレームごといってしまったから、もうかけられない。だからスペアを取りに行く」 「ああ、だから寮に向かっていたんですね」 「そういえば小嶋から聞いたぞ。期末厳しいんだって?」  今日だけで何回目だろ、この会話。しかも決まって生徒会の人たちからである。 「先輩も委員長から聞いたんです? あの人見た目のわりに口軽いから困っちゃいますよ」 「俺でよければ」 「へ?」 「俺でよければ、力になるぞ」 「……まじっすか」  何だろう。千葉や会長に言われたときは、ものすごくムカついたのに、宮崎先輩が言うとナチュラルに聞こえる。 「え、本当にいいんですか。俺、できなさすぎて引かれる自信しかないんですけど」 「俺は引かないから安心して」 「ええ、じゃあ……お言葉に、甘えちゃおうかなー?」 「たまには上も頼れよ。こう見えても一年先輩だから」  くうーっ。かっこいい。惚れる。これは惚れる。  まさに憧れの先輩である。 「じゃあこのまま校舎へ引き返す? それとも寮で?」 「寮に勉強するところってありましたっけ?」 「そういえばないな。俺の部屋来るか? 今の時間なら同室のヤツはいないし、昔使っていたノートが残っているかも」 「それなら俺のとこでもいいですよ。俺なんかお邪魔したら同室者さんに悪いでしょ」 「千葉はいいのか?」 「アレは夜まで帰ってきませんよ、きっと」  なぜならば、さっきものすごく申し訳ない別れかたをしてしまったからだ。互いに気まずいだろう。それにもし千葉が帰っていたとしても、ヤツはきっと自室に閉じこもっているはず。 「じゃあ、先輩。俺の部屋へご招待しますね。何ももてなせないけど」  それから俺は宮崎先輩と一緒に寮へと戻った。  途中、目が悪い先輩が何度かつまずいてコケそうになったのは内緒である。

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