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第2話

  「ああん、三人とも上手だよぉ。おちんちんも平等に食べさせてあげるからね」    ぺろぺろ、ちゅばちゅば、れろれろ。  三つ巴の混戦模様に、アッハ~ンな空気が色濃くなりゆくなかで、長机もキャビネットもホワイトボードもその輪郭がゆがみはじめた。  それにともなって天井にサイケデリックな渦が出現し、四人はすぽんすぽんと吸い込まれていった。 「桃会長、なんなんすか、これぇ!」 「僕にもわからないよぉ……あっ、おちんちんが丸出しのままだった」  ダリが描いたような、ぐにゃぐにゃした空間で錐揉み状態になっているうちに、胃がでんぐり返って目が回って気を失った。意識を取り戻すと、四人は砂浜に倒れていた。  補足すると、手漕ぎ式の小舟を枕にして。  きょとんとした顔を見合わせる。そこに〝めんそ~れ、鬼ヶ島〟と墨痕あざやかな垂れ幕がかかり、天が語りかけてきた。 「遠路はるばる大儀であった。オフレコで頼むが、こちらの世界の桃太郎一行が鬼退治に向かう途中でバックレてしまったために急遽(きゅうきょ)、メンバー構成に共通点が多い諸君をパラレルワールドから召喚した次第だ」  桃太郎は、うわずった声で独りごちた。 「確かに僕は、苗字と名前を一緒くたに棒読みすると桃太郎。補佐役の三人組は猿に雉に犬だし、学校名も鬼が島で激似。おまけに生い立ちも……」    今を去ること十八年前、桃の形をした(かご)に寝かされて捨て置かれていたところを河原にキャンプにきていたおばあさんが保護してくれた、という過去を持つ。  ちなみに、おじいさんはそのとき自宅の庭の芝生を刈っていた。  天の声が再び響いた。 「旅立つまでの経緯および、道中についてはお伽噺(とぎばなし)に詳しく書かれているので割愛する。ついては鬼ヶ島に上陸して以降の活躍を諸君に期待する。参考までに鬼はツワモノぞろいにつき健闘を祈る」 「丸投げかい!」  四人は一斉に怒鳴った。

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