4 / 16

第4話

 四人はチビりそうになるくらいビビった。  勇者という設定ではあるものの、実際は普通の高校生に、こんなおっかない連中を打ち滅ぼせなんて無茶ぶりがすぎるでしょうが。  しかし、ご都合主義がまかり通る世界だけあって不可能を可能にするのだ。本家本元の桃太郎一行のものがコピーされる形で戦闘能力が(そな)わっているあたり、配慮が行き届いている。  ひらたく言えば、桃太郎は剣の達人と化していた。 「猿渡、雉原、犬丸、フォローよろしく!」 「合点承知! 桃会長のキビダンゴを頬張ってパワーアップ、地獄の底までお供つかまつります!」  4Pで培われた四人の結束は固い。  桃太郎は宮本武蔵ばりの剣さばきで鬼たちを斬り捨てて回り、猿渡は引っかき、雉原は(くちばし)……はないので棒で突き倒し、犬丸は嚙みついて果敢に闘った。  たちまち屍累々(しかばねるいるい)とボーナスポイントも稼いだ。  ちなみにばったばったと鬼をなぎ倒しがてら、桃太郎がトラ縞のパンツの膨らみ加減が抜きんでて立派な鬼を物陰に誘い〝金棒〟を味見したのは言うまでもない。    あとは首領との対決を残すのみ。船着き場に設置されている観光案内図によると、首領の自宅はオニヤンマが飛び交う丘を越えて、鬼の洗濯板と呼ばれる岩場を通りすぎオニアザミが咲き乱れる坂道をのぼりつめた先にある。  余談だが島巡りのツアーの昼食は鬼殻焼きで、お土産は鬼瓦だ。  ゴーゴー、レッツゴー、鬼が島イェ~イ。四人は景気づけに校歌を歌いながら、先を急いだ。  行く手に豪壮な屋敷が現れはじめたとたん、雷鳴が轟き、土砂降りにみまわれた。稲光があたり一面を蒼白く染め替え、鬼火がぼうっと光り、インスタ映えすることまちがいなしだ。 「こんにちはぁ、あなたがた鬼の一族が近隣の村から略奪した金銀財宝を返してもらいにきた者です。僕たちは平和主義者で、おとなしく投降してくださぁい」  桃太郎はインターフォン越しに、にこやかに来意を告げた。生徒会長という役職柄、熱弁をふるい慣れていて、いわば応用編だ。

ともだちにシェアしよう!