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第8話

   熱い眼差しを向け合うにつれて、唇が自然と重なっていく。ついばみ、離れて、またついばむ。  それを繰り返すのにともなって、蕾がほころぶように唇の結び目がゆるみ、舌が互いのそれを求めてひりつきだす。ただしキスが深まると、そこに種族の垣根が横たわる。  (きば)が舌に刺さるのだ。 「痛ぁい」  くちづけが、にわかに塩辛い。 「大丈夫か。ええい、こんなもの引っこ抜いてやる」  首領が己の牙をもぎ取りにかかる。その武骨なやり方に、真摯な想いが込められていた。  胸がじんとして、にもまして躰の芯が甘やかにざわめく。がっしりした首に腕を巻きつけて、つづきをせがむ。  くちづける角度を変えながら、互いの口腔を隈なく荒らす。狂おしく舌を絡め合うと、牙に()がれて血がにじむ。金臭い隠し味に、むしろ劣情をそそられる。 「駄目だ、アオカンになだれ込むのは時間の問題……!」  トリオは胸を搔きむしり、のたうち回った。俺たちの可愛い桃会長の幸せを祝福したい、ぽっと出の野郎にかっさらわれるなんて冗談じゃない。  ジレンマに陥り、それでも覗き見をやめられないのだから、M奴隷の素質に恵まれていた。    桃太郎と首領は、群れ咲くオニユリを(しとね)に寝そべった。芳香にむせ返るようで、おまけに茎に引っかかって上衣がはだける。  サクランボのように可憐な乳首がちらつき、トラ縞のパンツがむっくりとテントを張った。のみならずモザイク必須なまでに、亀の頭がパンツの縁からコンニチハをするありさまだ。  辛抱たまらんと股間をくっつけ合った折も折、天の声が響き渡った。 「桃太郎よ、色ぼけしている場合ではないぞ。初心に返って、ただちに天誅を下すのだ」 「できない、愛する鬼ちゃんをこの手で亡き者にするくらいなら、死ぬまでおチンポ断ちするほうがマシ……ばびぶべぼぼぼ!」    天の声レーザービームを浴びて、骸骨が透けて見えた。 「おのれ、よくも桃太郎くんを……!」    首領が金棒を天に向かって投げつけると、レーザービームが発射されて髪の毛がちりちりに焦げた。

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