遠見と最初に仲良くなったのは東の方だった。 高校に入学して一太、東、遠見の三人は同じクラスになったのだが、東と遠見は席が前後だったのだ。 東が自然と遠見と仲良くなりその流れで梓も仲良くなった。 遠見は人当たりはいいが、実際はなかなか冷めた奴だった。 ニコニコしながらその場をさらりとやり過ごすのが上手い。 いつだったか揉め事や面倒事が嫌いなのだと言っていた。 仲良くなるにつれ自分のそういった本音を話してくれるようになった。 一太もそうやって自分の本心を見せてくれる遠見に少しずつ遠慮がなくなっていき、いつしかとても話しやすい相手になっていった。 東がいなくなった今、一太が一番一緒に居やすいのは遠見だった。 　 東は今ここにはいない。なのにいまだに頭から離れない。 　 あの事があったから。 でもそれを遠見に相談するわけにもいかない。 いい加減忘れないと。東もきっとそのうち俺の事なんて忘れる。 連絡が来なくなる日がきっとくる。その日が来てしまう前に、こっちから早く忘れたい。 それなのに、東からくる連絡を待ってしまう。知らない友人達に囲まれ、行ったことのない街で楽しそうに遊ぶ東を見ながら、心の中で静かにざわつく気持ちを感じながらも、それでも連絡が欲しいと思ってしまう。 東の事は特別に思っていた。でもその特別は友人としてのものだと、一太は思っていた。思い込もうとしていた。