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春 東 ④

遠見は良い奴だ。 だいたいの奴は一太の融通の聞かない真面目さに嫌気がさしてそんなに深い仲になろうとはしない。 しかし東はその真面目さも愛しく思っていた。 自分だけわかってれば良い。 東と一太の世界はそれで完結してた。 そんな中に遠見は入ってきた。 遠見は穏やかで人に合わせるのが上手い。真面目な一太にもちゃんと合わせる。手を抜けるところは抜いて。 一太も一緒にいるうちにそんな遠見の性格を理解していった。 一太にとって遠見は、真面目な部分を含めて合わせてくれる居心地の良い相手だったに違いない。 東は不真面目なところを一太が世話を焼いてくれて関係が成り立っていた。遠見とは違う。 そのことが東には不安だった。二人だけになったらきっと距離が縮まる。そう思っていたのだ。 しかしそれは東がいても関係なかったのか。 一太から感じていた特別なものは勘違いだったのか。 東は恥ずかしくなった。それと同時に一太が憎らしくなった。 だから、最後の日、一太との別れの日、あんなことをしてしまったのだ。 「東ー?どうしたの?なんか嫌な連絡?」 スマホの画面をボーッと見ていた東に鈴花が声をかけた。 「あ、いや、向こうの友達から。何でもない」 「そう?」 鈴花はニコリと笑う。 そうだった。自分の思い違いのしやすさを思い出した。 鈴花が自分に好意を持っているなんてなんの確証もないのに。一体俺は何を考えてんだ、鈴花にも失礼だ。 また同じ失敗はしたくない。結局こうやって、一太を忘れようと思っても関係が切れるのは嫌で連絡してしまう。 ただし悔しいから、こっちで楽しくやっていることばかりの報告だ。 東は空を見上げて思った。 一太は今日も遠見と二人でご飯食べてるのかな。。

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