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春 遠見 ①

「好きです」   遠見は顔を真っ赤にして自分と向き合っている女子生徒の顔をじっと見つめた。 同じクラスにはなったことはないが昨年委員会が一緒だった子だ。 「あの、遠見君のことずっといいなって思ってて。優しくていつもニコニコしてるし。その、もしよかったら付き合ってほしくて・・」 遠見は柔らかく微笑んで答えた。 「ありがとう、でもごめんなさい。俺、今は誰かと付き合う気はないんだ」 「あっ、そうなんだ・・」 彼女はさらに顔を真っ赤にしながら下を向いた。 「あの、あ、じゃぁお友達として!!普通に仲良く出来たら嬉しいな、なんて・・」 彼女は精一杯声を出して言った。 「うん、、それなら俺も嬉しいかも。ありがとう、伝えてくれて。答えられなくてごめんね。」 遠見はニコリと笑った。 「じゃぁ、俺友達が待ってるから行くね。気をつけて帰ってね」 遠見は笑顔でそう言うと、くるりと向きをかえ歩き出した。   校舎の一階、一番隅の場所、図書室に着いた。 遠見は扉を開け中を見回す。 一人背中を丸め一生懸命勉強している後ろ姿が目に入った。 「梓、お待たせ」 遠見はその背中に話しかけた。 「あぁ、お帰り」 一太は上目遣いに遠見の顔を見上げた。 「どこまでやった?」 「36ページ」 最近は中間テストが近いので図書室で勉強をしてから帰るのが二人の日課だ。 遠見は一太の正面の席に座り教科書を出して勉強を始めた。 一太が視線を下に向けたまま聞いてきた。 「告白だったのか?」 「うん」 遠見も下を向いたまま答える。 すると一太は目線を上げ目の前の遠見を睨みながら言った。 「遠見モテるな~・・放課後に呼び出されて告白されるとか漫画みたいだ」 「そう?そんな珍しいことでもないでしょ。東だってよくされてた」 「う、まぁ確かに。。あいつは中学の時もそうだった」 一太は東の名前が出て少し目が泳いだ。 遠見はそんな一太の顔を見ながら聞いた。 「この間撮ったプリクラ、東に送った?」 「あぁ、うん、こっちにだってあるぞって書いて」 「返事きた?」 「うん、楽しそうだなってさ」 「ふーん、そっか」 遠見はクスリと笑った。 東はあのプリクラをどう思ったのかな。 仲良さげにちゃんと見えたかな。 付き合ってるって、まだちゃんと信じてるのかな。 遠見はチラリと一太を見た。真剣にペンを走らせながら勉強をしている。 東、ごめんね、嘘ついてさ。 気付いてたよ。お前が梓に告白しようとしてたこと。 気付いてた。二人の気持ちも。 だから、進展する前に俺が壊したんだ。 進展なんてさせてやらない。 東は優しいからあぁ言えば自分の気持ちは飲み込むだろうなって思ってた。 良かったよ、お前が信じやすいバカ正直なやつでさ。 まぁでも、俺達がそういう関係だと思っているはずなのに、いまだに梓に頻繁に連絡してくるところは気に入らないけど。 「遠見、なんかボーッとしてる?考えてる?」 一太が勉強の手を止めて声をかけてきた。 「あーわかんなくて思考停止してた。はは、後で教えて」 「あぁ、わかった」 そう答えると一太は再び自分の勉強に戻った。 今のところは順調だ。あとは嘘を本当にすれば良い。 早く梓を本当に自分のモノにすればそれで安心だ。

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