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夏 一太 ①

夏の季節   雨の日が続いている。 昨年何だかんだと揉めた体育祭は、今年は驚くほど平和に終わった。 委員にならなかったことがやはり大きい。 自分には何かをまとめるのは向いていないのだろうと一太は改めて思った。 来月の期末の頃には梅雨も明けて、あっという間に夏休みになる。 時間が過ぎるのってこんなに早かったかな。 一太は廊下の窓にあたる雨を見ながら思った。 教室に戻ると遠見が話しかけてきた。 「おかえり、今年の夏合宿、参加できそう?」 「あぁ、今年は人数いるから合同合宿行けるって、一年生様々だよ」 去年は三人だけだった天文部は、なんと今年一年生が五人も入った。 おかげで部費も増え、夏休みは全部活動合同合宿に参加もできることになった。 「ありがたいなぁ、合宿場所、高原だから星たくさん見れるよきっと!」 一太はいつになくワクワクしていた。 「来年の夏休みは受験で参加できないだろうしね、いやだな、来年」 遠見はつまらなそうに言う。 「ちょ、来年の話は今はなし!それより今年の夏休み、遊んでおかないとなぁ。どっか行きたいなぁ」 「そうだね、せっかくだから旅行とかしておきたいよね」 遠見はニコニコしながら言った。 「旅行かぁ。お金かかりそうだな・・」 一太は少しテンションが下がった。 アルバイトをしたかったが、親に大学生まではやるなと言われている。 遠見は高校近くのファミレスで去年の秋からバイトをしていた。 そんな遠見がスマホの画面を見ながら唐突な提案をしてきた。 「今旅行サイト見てるんだけど、パックの探せば結構安いのあるよ。そうだ!東京行かない??」 「え?」 一太は『東京』という単語にドキリとした。 「東京までの交通費と宿のパックって結構あるみたい。俺ら修学旅行北海道だし、東京行ってみたいじゃん。東にも久々に会えるかもしれないしさ!」 「あ、そうなんだ。安いのあるならいいかも・・」 一太は東の名前にどう反応してよいか一瞬迷ってしまった。 東とは今でも時々連絡はくるが、あまり自分から話題を出すことはなかった。 なんとなく東のことになると意識してしまう自分がいるからだ。 「そうと決まれば俺、安いパックのやつ探しておくよ!東にも連絡しとく!あ、梓からする?」 「え、あぁー俺はいいや、遠見お願い」 「OK!」 東と会う、か。 もしそれが叶うなら『あの日』以来になる。

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