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夏 東 ①
まだ梅雨は明けてないらしいが、すっかり日差しは真夏そのものだ。
ジリジリとした暑さが教室の窓からも伝わってくる。
東京の暑さも向こうとたいして変わらないなと東は思った。
もしかしたら今日にも梅雨明けの発表があるかもしれない。
しかし、今東の頭を占めているのは来週からの期末テストと、遠見からきた突然の連絡だった。
東はスマホの画面をボーッと見つめた。
そこには先週遠見から来たメッセージが写し出されている。
『東、久しぶり。元気にしてる?
突然だけど、夏休みに梓と東京へ遊びに行くことになりました。
宿と飛行機はもう予約してて8/2から二泊三日。
もし東の予定が合えば会いたいです。東の友達も紹介してほしいな!』
あまりに突然の連絡で東は驚いた。
転校してからというもの、遠見とは誰でも見れるSNS上での簡単なメッセージのやり取りでしか連絡をとっていなかったからだ。
それが突然、一太と東京に来るという。
遠見は一体何を考えているのだろう。
一太と遠見は付き合っている。
そのことを自分が知っていることを、一太は知らないはずだ。
つまりこれは・・知らないふりをしたままあいつらに会えということか?
あの二人が、一緒に仲良く来るのを迎えなくてはいけなくて、そして同じホテルに帰っていくまで一緒に過ごさなくてはいけないのか・・
東の心はドス黒い気持ちが渦巻いていた。
ヤってんのかな。
当たり前だよな、付き合ってんだもんな。
しかも二人で旅行に行くほどに仲良くなってるのか。
想像したくなくても頭をかすめてしまう。
一太と遠見がそういう行為をしているところを。
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