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夏 遠見 ①

「遠見!一太!」 空港の到着ゲートを通ると東が笑顔で手を振っているのが見えた。 東の姿を見るのは久しぶりだったが、東京に行ったからといって何かが変わるわけではないようだ。 相変わらず明るく調子の良さそうな雰囲気で笑っている。 ちらりと隣りの一太を見た。 一太は少し頬を赤らめながら微笑んでいた。 嬉しそうにしちゃって。 遠見は心の奥底で舌打ちをした。 「お疲れー!飛行機大丈夫だったか?酔わなかったか?」 東が駆け寄ってきた。 「大丈夫だったよ。梓は少し緊張してたよね」 遠見は一太の肩をポンと叩いた。 「初めてなんだから当たり前だろ!」 一太は少し恥ずかしそうに言った。 「一太も遠見も久しぶり!元気そうだなぁ」 「お前も変わらず元気そうだな」 遠見は微笑みながら答えた。 これからの三日間、東の言動に注意しなくてはいけない。 『嘘』がバレてしまっては元も子もない。 「とりあえず荷物ホテルに置きに行く?お台場のホテルだよな?そのままお台場観光して夕飯でも食べようよ」 「そうだね、東にガイド任せて良い?」 「任せとけ、そのつもりで色々調べといた!」 東と遠見でトントンと話を進める。 一太はまだ東にちゃんと話しかけられていない。 東の姿を懐かしんでいるようだ。 「一太、ちょっと背伸びた?」 「変わんないよ。東が伸びたんじゃないの?」 一太は無愛想なふりをしつつも東をじっと見返す。 一太の瞳が嬉しそうに輝いているのが遠見にはわかった。 この旅行に、遠見は勝負をかけていた。 東に自分達が付き合っていると信じさせること。 そして東が東京に馴染んでいることを一太に見せること。 そうして一太の東への気持ちを諦めさせること。 いつまでも東の影を見ているような一太の視線を断ちきりたいと、遠見は思っていた。 「そう言えば今日は東の友達は?合流するの?」 遠見は聞いた。 「え?友達?」 一太はキョトンとした。 「あぁ明日な、1日東京観光に付き合ってもらおうと思って!」 東はニカッと笑った。 「え、東の友達も来るの?」 一太は少し戸惑いながら遠見に聞いた。 「あ、言ってなかったっけ。せっかくだから東の友達も紹介してもらいつつ、東京案内してもえたらなって話してたんだ。東だけじゃ頼りないでしょ?」 遠見はニコリと笑いながら言った。 その笑顔は有無を言わせないものだった。 「あ、そうなんだ・・」 一太は少し困惑したがそれをあまり顔に出さなかった。 「まぁ確かに。東なんて4ヶ月前までは田舎者だったんだもんな」 「何をー!」 東はそう言うと一太の髪の毛をグシャグシャと撫でくりまわした。 その後お台場まで移動し、チェックインを済ませ観光名所に繰り出した。 「人すごいな、今日祭りかなんかあんの?」 一太が聞いた。 「いいや、いっつもこんなもんだよ。むしろ今日平日だから少ない方」 「え?!まじで?!」 「な、俺も最初思った。どこ行っても人ばっかで年中そこら辺で祭りやってんのかと思ったよ」 「都会、すごいな・・」 一太は感心したように周りを見渡した。 その後、三人でお好み焼きのお店に入った。 鉄板の上で焼かれるお好み焼きを見ながら、最近の近況や地元の変わったことなどの話で盛り上がった。 そんなとき東が何気ないようなそぶりで切り出した。 「あのさ、明日、紹介したい人がいるんだ」 東はヘラでお好み焼きを四等分にしながら言った。 「紹介したい人?」 一太が聞いた。 「うん、彼女。俺彼女出来たんだよね。言ってなくてごめん!」 そう東は笑顔で言った。 「え・・・」 一太は一瞬固まったように見えた。 遠見はその表情を横目で見ながら東に聞いた。 「へ〜なんだ、言ってよ!いつの間に出来たの?!」 「はは、ごめん!つっても本当最近!先月から付き合い始めたばっかで!」 東は少し照れたように言う。 「まじかぁ、おめでとう!めでたいね、ね、梓?」 遠見は一太に話しかけた。 「え、あぁ、うん!本当だよ、てか早く言えよ!」 一太は笑って言った。 これはありがたい誤算だ。 遠見は無理に笑っている一太の顔を見て思った。 まさか東に彼女ができてるなんて。 東の行動力には感謝しなくちゃな。 「明日彼女もくるの?楽しみだね!」 遠見は一太に話しかけるように言った。 「そうだね・・」 一太は少し伏し目がちになりながらお好み焼きを口に運んだ。

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