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夏 遠見 ⑦
朝、一太はシャワーを浴びてから服を着ると、チラリと部屋の中央に目をやった。
ベッドでは遠見が横になっている。
「おはよ、梓」
遠見が目を開け一太の方を見た。
「お、おはよう・・」
「はは、そんなキョドんないでよ」
遠見は起き上がるとベッドに座り直した。
「別に、キョドっては・・」
一太が赤くなりながら目を横にずらした。
「昨日、気持ちよかった?」
遠見は立っている一太の手を握り聞いた。
「気持ちいいって・・・うん、ごめん、ありがとう・・」
昨日、一太は遠見に下を触られ愛撫されながら果てた。
一太にとってそれは初めての快楽であり、経験だった。
一太のキャパはオーバーしてしまい、疲れていたこともあってそのまま寝てしまったのだ。
「俺だけ、やってもらって。しかも、先に寝ちゃって。本当ごめん」
「別に、気にしてないよ、梓が良かったならそれでいいんだよ」
本当に申し訳なさそうな一太の姿に遠見は笑って答えた。
「あ、今度は俺が、あの、遠見にしてもらったこと、やれるように、えっと」
一太は赤くなりながら必死に喋った。
「え?今度?」
遠見は笑った。
「あっ、えっと、今度って言うのは・・!」
一太は慌てて別の言い方を考えようとした。
しかし遠見の言葉に遮られた。
「嬉しい。今度があるってことは、梓、俺と付き合ってくれるってことでいい?」
遠見は一太の手をギュッと握って聞いた。
その手は少し震えていた。
一太はそんな遠見の手に気付き強く握り返しうつ向きながら話した。
「本当に、俺でいいの?俺、こんなだし。。多分すごい、遠見に迷惑かける」
遠見はそんな一太の手を優しく包むようにして微笑んだ。
「どんな梓でもかまわないよ。ただ一緒にいたいんだ。梓と、ずっと」
そう言われ、一太はごくりと喉をならした。
「うん、あの、こんな俺でよければよろしく、お願いします」
一太は恥ずかしそうに目をそらした。
すると遠見は立ち上がると一太を強く抱き締めた。
「よかった、嬉しい、ありがとう」
「と、遠見・・」
「梓、好きだよ。ずっと一緒にいよう」
「・・うん」
一太も遠見を抱き締めた。
ずっと抱きしめたかった体にやっと触れた。
これで、やっと梓を手にいれた。
ありがとう、東。
お前のおかげで梓はこっちに転がり落ちてきてくれたよ。
大丈夫。
俺が君を幸せにするから。
ずっと。
これから先も、君の隣で。
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