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秋 一太 ④

修学旅行まであと一週間となった日、遠見と一緒に帰ろうとしていると根山に呼び止められた。 「すみません、梓先輩。遠見先輩ちょっとお借りします!!」 根山はそう言うとグイグイと遠見を引っ張っていった。 「あ、じゃぁ遠見、今日は先帰ってる!」 一太は遠くなっていく遠見に叫んだ。 遠見は軽く手を振って返事をした。 告白かな。 一太は一人帰りながら思った。 東と帰っている時も、こういうことよくあったな。 東が呼び出されて、自分は一人残される。 そうして家に帰った頃に東から連絡がくる。 告白されてもOKすることが全くなかったからあまり気にならなかった。 東に好きな人はいないのだろうと思っていた。 あんなにモテたのに彼女は作らなかった。 そう思うと、鈴花はスゴいのだなと改めて思った。 引っ越して早々に仲良くなり東は好きになったのだ。 きっと東の運命の人だったのだろうな、などと乙女な思考になった。 夜、お風呂から出た頃、遠見から電話があった。 「今日はごめん」 「いや、大丈夫。大事な話だったんだろ?」 「うーん、そうだね・・」 「・・告白?」 「うん、まぁ」 「うーん、そっか。まぁ、そうだろうなって思ったけど」 「修学旅行でさ、カップルになる人が多いからその前に言っておきたかったんだって」 「ふーん。それで、何て言ったの?」 「そりゃ、ごめん、て・・」 「・・根山、部活明日から大丈夫かな?」 「大丈夫だと思うけどなぁ。玉砕覚悟だったんで~って笑ってたよ。お土産はくださいね、って言われたし」 「はは、根山らしいや」 「ね」 「じゃぁ、何か良いお土産買ってきてあげなきゃな。好きな人から物貰うのはやっぱり嬉しいだろうし」 「・・あんまり思わせ振りなのも良くないけどね」 「あっ、そっか。そういんもんなのか・・俺、モテないからそういうの全然わかってないなぁ」 一太は笑いながら言った。 「いいんだよ、梓はわからなくて」 遠見はクスリと笑って言った。 「なんだよ、それ」 「はは。まぁ、修学旅行楽しもうね、梓」 「うん。そうだな」 修学旅行、北海道は初めてだから楽しみだ。 そう言えば一年の時、東もすごく楽しみにしていた。 その時はまさか引っ越すとは思ってもいなかったな。 いっぱい美味しいもん食べようって張り切ってたっけ・・ 東達の高校は修学旅行どこに行くのだろう。 もう行ったのだろうか。 未読のまま、見ていない連絡が少し気になった。 しかし一太は頭をふった。 もう気にしない、忘れるんだ。 こうやって、つい思い出してしまうことも早く無くなればいいのに・・ 次の日、クラスの女子達が話してる声が聞こえた。 「ね、見た?東のSNS?」 最近ではあまり東の話題は上がらなくなっていた。 久々に女子達の口から東の名前を聞いたなと、一太は席に座りながら思った。 そしてついその内容に聞き耳を立ててしまう。 「見た見たー!かぶってるっぽい?」 「ぽいぽい!昨日ラインしてみた!」 「何がー?」 女子や男子が数人集まってきて話している。 「修学旅行、東も北海道なんだってー!」 えっ、と一太は思った。 「しかも、日程聞いたら3日目の動物園と富良野被ってるみたい!」 「すごい!会えんじゃない?!」 「へーまじか!連絡してみよ」 「ねー!」 一太は胸の動悸が早くなるのがわかった。 そしてふと見上げるとそこに遠見が立っていた。 遠見も話が聞こえていたようだ。 「困ったね・・」 遠見は一言ポツリと言った。

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