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秋 東 ②

結局一太からの返事はこないまま、修学旅行の日となった。 東達の学校は一太達よりも一日遅れで北海道へと着いた。 スケジュールも被っているのは二日目の動物園と富良野だけだ。 一日目は札幌市内近郊の観光で自由行動が主だった。 東はいつも通りのグループで行動した。 確か一太達の学校は今日は小樽って聞いたっけ。 行こうと思えば行けるが、東達のグループは展望台へ行くのがメインで小樽へ行く時間はなさそうだ。 「ね、東、見て見てー!」 鈴花が楽しそうに遠くの景色を指差した。 「写真とろ!写真!澤くん撮って撮って!」 「はいはいー」 鈴花は東と腕を組み笑顔で写真に写った。 「東、楽しいね!」 満面の笑みで言う鈴花に東はどきりとした。 そうだ、今はこの時間を楽しまなくちゃ。 鈴花にとっても俺にとっても大切な思い出になるはずなのだから。 夜、男子の部屋で喋っていると前の学校の友達から連絡がきた。 一太と遠見以外の男子や女子からだ。 『東ー!今日はどこいた?俺らは小樽!明日会えるの楽しみにしてるから!』 『東!明日予定被ってるって本当ー?探すから着いたら連絡してよね!』 『彼女紹介しろよー!東京の女子の紹介もよしく(笑)』 その一つ一つに目を通していると針崎が聞いてきた。 「何々?前の学校の友達?」 「うん、明日会えたら会おうって」 「会えるんじゃん?ほぼ一緒のコースなんだろ?午前動物園の午後富良野」 「うん、まぁ。なんか久々に会うってなるとちょっと緊張するなぁ」 「梓君と遠見君もいるんだよな?会えそう?」 東はドキッとした。 「あぁどうだろ。あいつらからあんまり連絡なくて。忙しいっぽい」 「へー、そっか。俺も会いたかったけどなぁ。まぁウロウロしてたら偶然でも会えるだろ」 「・・そう、だよなぁ・・」 東はどんな顔で会えば良いのか、わからなくなっていた。 話しかけて良いのか、一太はどんな顔をするだろう・・ 「ちょっとごめん、電話してくる」 東は覚悟を決めスマホを片手に部屋から出た。

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