電話をかける相手は遠見だ。 一太は出てくれない可能性が高い。 正直遠見に連絡をするのは気が乗らなかったが仕方がない。 電話の呼び出し音が鳴る。 なかなかでない。 気付いてないのかな。 切ろうかと考えた時だった。 『もしもし・・』 遠見の少し気だるそうな声が聞こえた。 「あ、ごめん俺、今平気か？」 『大丈夫だけど・・東から電話かかってくるなんて珍しいからビックリしたよ』 「え、そうか？」 『うん。東から連絡するのは梓くらいでしょ、だいたいは相手からばかりじゃない？』 「あー、まぁ、つい電話とかすんの面倒くさくなっちゃうんだよなぁ。しようとは思ってるんだけど」 『別に良いけどさ。何か用事？今東達も北海道にいるんでしょ？』 「あ、うん、あーえっとさ、一太いるかな？あの、一太と連絡取りたいんだけどなんか繋がらなくてさ・・」 『・・梓は今いないよ、お風呂入ってる』 「・・本当に？」 『本当にって、なにが？』 「えっと・・おれの勘違いだったら悪いけど、なんか俺のこと、避けてんのかなぁなんてちょっと思ったり・・」 『・・どうだろう？そう思うのならそうなのかもね。俺は知らないよ、何も聞いてないから』 遠見の口調はゾクリとする程冷たいものだった。 「えっ、ちょ、なんだよ、それ。なんか遠見俺に冷たくない？俺、なんかした？」 『そんなことないでしょ。俺はもともとこんなテンションだよ。どうしたの？東らしくないなぁ』 「俺らしいってなんだよ・・あのさ、明日、日程かぶってるだろ。だから会いたいんだけど」 『おれに？梓に？』 「両方！！なんだよ！俺ら３人で仲良かったはずだろ！！なんか、変だよ。お前らが付き合ってたって俺らの関係は変わらないだろ！！」 『・・そうだね。東が変えるつもりがないなら変わらないよ』 「・・えっ、どういう意味・・」 『ごめん、そろそろ点呼の時間だ。明日、会えたら会おう、じゃあね』 そう言うと遠見はブツッと電話を切った。 なんだろう、この違和感は。 変わってないはずなのにもう自分の入るスペースの無さそうな感じは・・ 遠見はああ言っていたけど明らかに突き放したような言い方だった。 もしかして、俺が一太を好きだったこと、バレてる？ 最後に一太にキスしたこと知ってる？ いや、そうだったとしても誰にも気持ちを言ったことないんだ。 勘違いだって突き通せるはずだ。 そして結局一太とは話せなかった。 明日、一太に会えるだろうか。 会えたとしてどんな顔で会えばいいんだろう。 きっと明日も一太の隣には遠見がいるのだろうな。 そう思うと憂鬱になった。