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秋 遠見 ②
「はぁー疲れたぁ」
一太は思い切りベッドの上に寝転がった。
「バス移動も長かったし結構疲れたよね」
遠見は隣のベッドに腰掛け一息ついた。
今日は修学旅行二日目で一泊目の洞爺湖からバスで移動し小樽観光をした。
「川嶋すごい食べてたな。海鮮丼美味しかったけどさすがに3杯はすごいよな」
一太は起き上がり同じ班の川嶋の話を始めた。
遠見達の班は遠見と一太、それに川嶋と福地と水戸と夏目という男子の六人だ。
川嶋、福地、水戸、夏目はみんなマイペースで気さくな奴らだ。
何かと集まりたがる他のクラスメイト達とは違って自然と話しやすかった。
あまり東に固執するメンバーでもない。
それが遠見にはありがたかった。
東が北海道にいる。
そのことは一太もわかっているはずだが、まったく話題には出さなかった。
一太なりに気を使ってくれているのだろう。
「そいやさ、川嶋と福地の部屋でウノやるらしい、行く?」
一太が聞いた。
「うーん、どうしよかっなぁ。疲れたし今日は早めに寝ようかな」
「まぁ、そうだなぁ。明日もあるし・・」
そう言って一太は黙った。
明日、三日目。
東の学校と予定が被っている日だ。
さて、どうしたものか。
別に会ったってかまわない。
この間の夏とはもう違う。
一太と本当に付き合っている。
一太の心も体ももう遠見のものだ。
東をわざわざ牽制する必要はない。
堂々としていればいい。
遠見はちらりと一太を見た。
でもやはり、一太と東が会うのは面白くない。
東を前にしたら一太は絶対に意識してしまうに違いない。
東も友人だからと、相変わらず慣れ慣れしく一太に近づいてくるだろう。
「遠見、風呂どうする?疲れてるなら先入っていいよ?」
一太が聞いてきた。
その瞬間、遠見は一太をベッドに押し倒してキスをした。
「っつ?!ちょっ、とお、み・・」
一太は驚いて遠見の下でバタバタともがいた。
「なんで?誰かにみられる訳じゃないんだし、いいでしょ?」
遠見はそう言って笑うと再びキスをしながら、一太の服を少しずつまさぐった。
「あっ、ダメだっ、て」
一太は抵抗しながらも感じているようだ。
「お風呂、入るならヤった後の方がよくない?」
遠見は意地悪そうに笑いながら言った。
「でも、修学旅行だし・・」
「思い出になるよ」
遠見はそう言うと、もう何も言わせないとばかりに、一太の口の中に舌を入れ深いキスをしながら服をたくしあげた。
その時、遠見のスマホが振動した。
それはちょうどベッドに雑に投げて置いており、遠見からすぐに画面の文字が目に入った。
一太もその振動に驚き、一瞬力を緩めた遠見を避けて起き上がった。
そしてその画面を見て動揺した。
そこには『長洲 東』と出ていた。
「あ、遠見、電話、でなよ・・」
「いや、いいでしょ、別に」
「えっ、でもなんか急用かもしれないし・・あっ、俺、先に風呂入るよ。やっぱり修学旅行中にヤるのはマズイって。な、だから気にせず電話でてよ」
一太はそう言うとそそくさと自分の荷物をもって風呂場へ入っていった。
くそ。
東、本当に間の悪い奴だ。
そうして電話に出て、少し会話をした。
苛立ちをうまく隠せただろうか。
電話が終わって少ししてから一太がお風呂場から出てきた。
一太から少しの戸惑いと警戒心を感じた。
東から何の用だったのか、一太は聞いてこなかった。
一太がそのつもりなら、こちらから東の話題を振るのはよそう。
しかし今日はヤるのは無理そうだな。
多分今は一太の頭は東のことでいっぱいだろう。
遠見はそう思い自分も風呂に入ることにした。
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