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秋 遠見 ④

結局、遠見は動物園で東と会わないで済んだ。 しかしバスの中では東と会えたクラスメイト達で盛り上がっていた。 「東変わってなかったな!」 「でもちょっと髪色明るくなってたよ」 「彼女見た?」 「見た見たー!はぁ・・いいなぁ〜」 「ねー。東って彼女作らない奴だと思ってたのに。ショックー」 「お前らが相手にされてなかっただけだよ。やっぱ東京のJKはちがうわ!」 「何それー、むかつくー!」 バスの中はワイワイと盛り上がっている。 遠見はその話に聞き耳をたてていたが、隣の一太は目をつぶって眠っていた。 すると横から一人の男子に話しかけられた。 「そういや遠見は東に会えた?」 「いや、なんで?」 「東探してたぜ、遠見と梓のこと。てっきり、お前らは連絡取り合って会ってるものだと思ってた」 「あー、いや、最近はあんまり東と連絡とってなかったんだよね。彼女出来て忙しそうだったし?」 「あぁ確かにな。てかあいつから連絡くることほとんど無いしな、やっぱり彼女できると友情よりそっちとるよなー」 遠見はニコニコしながらも内心は穏やかではなかった。 隣の一太はちゃんと眠っているだろうか。 この話は一太には聞かれたくない内容だ。 すると前の席の女子が言った。 「そういえば聞いた?東達も今日同じホテルに宿泊だって!」 え・・? 遠見は嫌な予感がした。 同じホテル?冗談じゃない・・ そんな遠見の不安な気持ちなどよそに、他のクラスメイト達は楽しそうに話し続けている。 「え?そうなの?!」 「会えるかな?私会ってないよー」 「でも今日って俺ら最終日だから、夜はレク大会じゃん?時間無いだろ」 「あー、そっかぁ」 そうだ、今日は最終日なのでホテルの宴会場を借りて、いわゆるお楽しみ会的なものが行われる。 主にはカラオケ大会やビンゴなどだ。 正直遠見はあまり参加したくないが、基本的には全員参加のものだった。 しかし今回に限ってはありがたいかもしれない。 東に会えない理由になる。 同じホテルとは言え、トラブルを避けるために他校とは食事会場などは別になっているはずだ。 遠見はチラリと一太を見た。 一太は鞄を抱えたまま眠っている。 一太の鞄にはさっそく先ほどのペンギンのキーホルダーが付けられていた。 一太には黙っておこう。 他の誰かが言わなければいいけど。 富良野では自然散策のあと、各々が選んだ体験学習だった。 遠見達の班はチーズ工場でチーズ作りを選んだ。 有り難いことに富良野観光でも東には会わなかった。 同じような修学旅行生は他にも何校かいたのだが、顔を見なければ気づくこともない。 問題はホテルだけだ・・ 遠見は何事もなく終わることを願った。

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