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冬 一太 ③
あれから東とは何の連絡もしていない。
何の連絡もこない。
今一太の隣にいるのは遠見で、一太が好きなのも遠見だ。
ただ一つ、気になっているだけ。
東が言っていた『言いに来た』相手と時期。
東は俺達が付き合ったのは、まだ東がこっちにいた頃からだと勘違いしていた。
東が引っ越すことになったから、言いに来た?誰が?何を?
そんな小さな疑問がずっと胸に引っかかっている・・
「っう、あっ・・・」
「梓・・」
一太は遠見の膝の上に乗る形で達した。
遠見も一太の腰に手をあて、激しく打ち付けると一太の中で果てた。
二人は熱のこもった身体を互いに抱きしめ合い、その熱が冷めるのを待った。
「なにか、飲み物取ってくるね」
遠見はそう言うと服を着て部屋を出ていった。
一太は下だけ履いてベッドに横になった。
遠見を疑ってるわけじゃない。
遠見を信じてないわけじゃない。
でも、この話を遠見には出来ないでいる。
東が勘違いをしているだけの話かもしれない。
思い違いをしてるだけのことかもしれない。
遠見の前で東の名前を出すことはもうしたくない。
遠見にまた嫌な思いはさせたくない。
でも、東は俺達が付き合っていることを知ってたと言った。
いつから知っていたのだろう・・
遠見と付き合ったのはあの夏の日からで、遠見が東にそれ以降に連絡をとっていたのか?
そんな話は全然したことないのに。
わかってる、気にしちゃいけない、忘れなくちゃ。
俺には遠見がいる。
でも、最後に抱き締められた熱が、言葉が忘れられない。
東ともう一度話がしたい。
そう思う気持ちを早くなくさなくては・・
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